千年女優

ダンサー・イン・ザ・ダークの千年女優のレビュー・感想・評価

5.0
チェコからアメリカへ息子と二人で移住した、先天性の病により失明の近いセルマ。貧しい生活の中で友人達の助けを借りながら遺伝により同じ病気を持つ息子の治療費の貯蓄に励む彼女が、それを巡って悲劇的な運命へと誘われていく様を歌手のビョークを主演にミュージカルシーンを交えて描いた、ラース・フォン・トリアー監督作品です。

あまりにも無常で無慈悲なストーリーであり、観る度に様々な相反する感情が渦巻く問題作です。果たして本作で描かれるのは無償の愛なのか只のエゴなのか、残されたのは希望なのか足枷なのか、抱くべきは感動なのか憤怒なのか無常なのか。そのどれが正しいのかと禅問答に陥りますが、おそらくはそのどれもが間違いではないのでしょう。

誰もが五里霧中の人生の中、限られた視野で、ある者が最善と踏み出した一歩が他人から足踏みや地団太に見える事もあります。だとしてもそれは本当に無駄な一歩なのでしょうか。その不器用なステップでも連なることでダンスへと昇華して受け継がれうる。人は誰もが人生における暗中模索の踊り子、ダンサー・イン・ザ・ダークなのです。
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