唯一無二という言葉しかない。
それは、ビョークというミュージシャンとラース・フォン・トリアーという映画監督の、強烈な個性の化学反応によるものなのだろう。後にも先にもこんな映画はないと思う。
鬱とか胸糞とか言われるのもわかるけど、そういう映画を見ることでしか得られない感情がある。ドストエフスキーや島崎藤村の小説のような、暗くて深い淵を覗き込んでしまったような。
でも、ちゃんと映画としてのカタルシスはあって、ホームビデオのグラグラ映像ではあ?ってなってるところから、最初のミュージカルシーンに切り替わるところは、単純に「スゲー!」と思った。それがセルマの「目」で見る世界と、想像の世界なのか、って気づいた頃には、すっかり作品世界に鷲づかみされていた。
たしかにラストはキツい。が、あの重厚な2時間余の先に響くビョークの歌声には、単なる感動にはとどまらない、体の真ん中が震えるような何かがあった。