「工場で働いていた時にね、よくミュージカルを空想してたの。ミュージカルでは、恐ろしい事は何も起きないわ」
彼女の抱える現実はあまりに重く苦悩に満ちていた、彼女自身も現実を受け止めていた。それでも愛する存在のため強く美しく生きる母親の物語。
この映画の魅力は、ひどく現実的なところだと思う。映画的な展開や救いもなく、利用もされれば裏切られもする。
一方で、彼女の空想世界は豊かさに溢れ、希望に満ちている。この対比に、より一層現実世界のままならなさを強く印象付けられる。
「これは最後の歌ではないわ、これは最後から二番目の歌…」
彼女は生きた意味を握りしめ、終わらない物語を歌う。