さき

ダンサー・イン・ザ・ダークのさきのレビュー・感想・評価

5.0
私は基本的にとっても甘々なレビューなので5点って結構頻繁に付けてしまうのですが、それでも今までに5点を付けた作品はもう一度観返したいなと思える作品がほとんどで、あのシーンが好きだな〜って思えるものでした。でもこの作品は、一つ一つのシーンが鮮明に心にこびりついてるし、忘れられないし、色々と感じ取るものはありましたが、もう一回観たいかって言われたら絶対に嫌だなという感じです。心が苦しい。

それでもやはり観てよかったと心から思える作品でした。

あれだけ暗い内容、閉塞感漂う映像にも関わらず、いちばん大きく感じられた感情は”愛”だったし、大きな愛を捧げられる相手がいるって、愛されるよりももしかしたら幸せなのではないかと思いました。

それから、私がなぜこんなにもフィクションの世界が好きなのか、その謎がこの映画によって解明されました。『ミュージカルの中では恐ろしいことは起きないでしょ』そんなような台詞が忘れられなくて。そうか、現実世界ではいつも理不尽なこと、避けたくてたまらない嫌なこと、怖くてたまらないこと…たくさんのしがらみが世の中には溢れてるし、それら全てから目を逸らすことも、解決することもできない。残念な事に。だからこそ、その理不尽さを心の中では晴らせるようにフィクションの世界に入り込みたくなるんだと、セルマは教えてくれたし、ミュージカルの妄想シーンは本当に楽しそうでした。

もう一度は観たくないけど、たまに心の中でこの映画のことを思い出すのもいいかなと思います。
さき

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