RIO

ダンサー・イン・ザ・ダークのRIOのレビュー・感想・評価

3.5
チェコからアメリカへと移住してきた、ミュージカルを愛するシングルマザーのセルマ。周囲の人達に助けられる毎日だったが、実は遺伝の病気で徐々に視力を失いつつあり、愛する一人息子のジーンにもその病魔は迫っていた。それでもセルマは必死に働き、昼は工場、夜は内職でコツコツ貯めた稼ぎを息子の手術代に当てようとしていたが…。

「鬱・胸糞映画」「ダークミュージカル」の声に身構えていたので想像よりは堪えませんでしたが、あのラストには思わず変な声を上げてしまいました。この救いようのない世界に取り上げられるモチーフが何より幸福なテンプレを持つミュージカルとはやるせない…。
ナンバーごとにロマンある展開を重ね晴れやかな気持ちでラストを迎えることの多いクラシックミュージカルとはまるで真逆、不幸に転じていく現実とは裏腹に色づくミュージカルシーンも終始不気味などころか、ナンバーが進むにつれて何かが重く身体にのしかかるようでした。

セピアに色褪せて薄暗く、手持ちカメラのドキュメンタリーのような映像も、観ているうちにまるで現実のように錯覚してしまいそうで不気味に感じました。大好きなカトリーヌ・ドヌーヴや「グリーン・マイル」での好演が印象深いデヴィッド・モースのおかげで度々映画作品だと認識できましたが、もし全キャスト馴染みのない状態だったら精神的に耐え難かったかも。個人的にはドヌーヴが、役者役柄共に今作の救いであり価値でした。
音楽劇に求められるカタルシスの意図的な欠如やB級映画然とした画面作りも好みとは違い、鑑賞後の気疲れも含めてお世辞にも再び進んで観たいとは言えません…。

それでも、ここまで突き抜けた陰鬱さは圧倒的。セルマの生き様や愛情に強く感じるものもあったし、クラシックミュージカルに対してアンチテーゼとも好意的とも取れる構造に様々な解釈の余地もあったので、観ておく価値のある作品には間違いありません。最後から二番目の歌。ビョークの歌声も圧巻でした。
RIO

RIO