ななみシゲマツ

ダンサー・イン・ザ・ダークのななみシゲマツのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

ララランドも好きじゃなかったし、レビューでもミュージカル好きじゃないから刺さらんかったって書いてる人が多かったからあんま期待せず見たけど、この映画はミュージカル映画じゃないと思う。ミュージカルは主人公が逃避をするためのツールとして使われただけ。

今まで見てきたミュージカル映画では、道端の他人とかさっきまで険悪だった相手と突然歌って踊り出すことにすごい違和感を感じてたけど、この映画はそういうシーンがはっきり主人公の妄想として分けて描かれていたのが良かった。
現実の主人公の歌とダンスは平凡なのに、妄想の中での主人公の演技はすごくて、そこがそのシーンの妄想らしさを際立たせてた。
今までミュージカル好きな人の気持ちがわからなかったけど、嫌な現実から陸続きでミュージカル(妄想)の世界に入っていくのがすごかった。

主人公の生き様が不器用すぎるところを批判するひとがいるけど、器用にずる賢く生きられないからこそミュージカルに逃避してたんだと思う。純粋で芯が通ってて、それが行きすぎて不器用に見えるだけで馬鹿ではない。
主人公を単なる映画の中のキャラクターとして見るとすごく不器用で頑固な人に見えるけど、もし現実でこの主人公に出会ったら、優しい人に囲まれて息子のために毎日働いてるごく平凡な人という印象を持つと思う。
セルマと息子の関係もドラマティックだけど、それだけでは映画にならなくて、ビルの存在だけがセルマをこんな映画の主人公にしたんだと思う。つまりセルマはとことん普通の人だ。
最後のシーンでこれは最後から2番目の歌って言ってたのは、これを見た私たちもセルマと同じように逃避することができるっていうのを提示してくれているように見えた。ほとんどの人はセルマほどミュージカルが好きじゃないと思うけど、それぞれが逃避できるところを見つけられればもうちょっと気楽に生きられると思う。
ななみシゲマツ

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