とかくこの世は弱肉強食。
川島監督。
戦後の高度経済成長期を、本音と建前を使い分けながら実にたくましく生きる人々の物語。
この監督、やっぱりセンスのかたまり。
舞台を団地の一室にほぼ限定させながら、アクの強い登場人物たちの軽妙かつどぎつい会話を軸に、ぐいぐい作品に引き込ませる。
飄々としながらも、欲まみれの本性を隠そうとしない人びとに、最初はニヤニヤ笑いながら見ていたが、次第に笑えなくなってくる。なぜなら、大なり小なり自分にも心あたりがあるから。きっとみんなそう。まさにブラックユーモア。
まずは、言ってることと裏腹に、やっていることはめちゃくちゃな一家が登場する。訪ねてくる人たちもみんなどこか変。自分勝手なことばかり言っている。そして満を持して登場する若尾文子演じる三谷幸枝。その美貌と頭のキレで男を手玉に取る彼女こそが、しとやかな獣。本作の真の主役。
面白いのに笑えない、食いつ食われつ、欲まみれの、獣の世の儚さよ。
人と獣の違いはどこにあるのだろう。