さっ

しとやかな獣のさっのレビュー・感想・評価

しとやかな獣(1962年製作の映画)
5.0
全編ほぼずっと団地の一室を盗撮したような映像が続く

前田家は狡猾で厚顔無恥そのもの、なのだがあまりにあけすけに、べらべらと自分の行状やら計画やら社会批評(?)やらを語らう、そのやりとりがもう最高

一方で前田家が相手どる人間たちもまた魑魅魍魎。次々と部屋にやってきては大舌戦を繰り広げる。生々しい愛憎と利害が絡み合い事態は混迷を極める

その中で、毒々しい真っ赤な夕焼けと躍り狂う姉弟の姿があり、照明を消してラジオを聞きながら晩酌をする夫婦の姿があり、嵐の前ぶれの強風にひるがえるカーテンがあり

そしてすべてを手玉にとる幸枝の恐ろしさ、美しさ。冷たい階段を昇りつめていく

他人の金で買った高級食品や酒やコーラが妙に印象に残る

やがて一人の人間の死ですべての計算が破綻し、彼らに終末が訪れる。それを最初に発見した母親のあの顔……!

お囃子がやみつき
さっ

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