さわだにわか

ブラック・エースのさわだにわかのレビュー・感想・評価

ブラック・エース(1971年製作の映画)
4.5
カンザスの農民ギャングがビッグコンバインで襲ってきたりオーバーオールに散弾銃のアンチ洗練スタイルで警備に当たっていたり最終決戦はのどかに牛舎とヒマワリ畑。売るもんがなけりゃヤク漬けにした孤児院の少女の服をひん剥いて牛みたいに囲いに入れて売っちまえ。カンザスに警察も税金もない! 狂っていて良い。

ハッキリとそう描かれるわけではないけれども冒頭の食肉加工工場が『悪魔のいけにえ』の影響とすると、あの町の人間は『悪いけ』がそうだったようになんとなく顔役ジーン・ハックマンの悪行に気付いてるんである。でもハックマンは産業基盤が貧弱で半ばお国から見捨てられた地元に利益をもたらすから知らぬ存ぜぬで誰も何も言わない。その意味で一番怖いのはやたら牛乳を勧めてくる謎ババアだった。

シカゴのギャングがカンザスの農民ギャングの借金取り立てにやってくるとかいうなんじゃそりゃ感の漂う貧乏ストーリーは地域経済格差の寓意だろう。ギャング映画というかブラックエースならぬブラックユーモアの映画。おかねがないというのはたいへんなことだとよくわかってよかったです。
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