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ビフォア・ザ・レインのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

ビフォア・ザ・レイン(1994年製作の映画)
3.6
             負のタイムループ

以前観て、内容は忘れていたけど胸に何かつっかえたのは覚えていて再鑑賞して、また同じような気分になりました。マケドニアとアルバニアの容赦ない民族紛争を描いています。

映像は美しく、人間は荒んでいて、途切れない憎しみの連鎖がタイムループになっています。

マケドニアの修道院編では「言葉」、ロンドン編では「顔」、マケドニアの山村編は「写真」がテーマで、時系列が歪み、登場人物が重なり、憎しみは消えることがありません。

構成はおもしろいし、人びとの会話は含みがあり、サスペンスを感じさせるんだけど、結局タイムループとなるから、それぞれのエピソードが深まらないうちに次のエピソードにつながってしまう。民族のおかれた逃れられない残酷な運命を描きたいにしては、ちょっと粗い気がしました。

兄を殺された憎しみで、一部と三部で機関銃を乱射するのはまだわかるんだけど、ロンドンでなぜ?なぜ? これはテロじゃん。すぐキレるの。ふつうの村人ではなく、山岳地帯のゲリラなのかもよくわかりませんでした。

それと、猫が…😭 亀も…

動物を合間合間に登場させ、これからの出来事を暗示するのに使っていました。でも、日本人にはわからないです。亀は「結婚式に出なかったことで亀に変えられた」白い馬は「敵対勢力を征服する勇者」等々、他にカラス、猫、犬、ロバ、ハゲタカ、羊、毛虫、鳩が場面ごとに差し込まれます。

型が優先され過ぎていました。もう少し魂入れてほしかったです。登場人物の状況も心理描写も部分は描いているのに、エピソードが短くて誰にも感情移入できず、殺伐とした雰囲気だけが残りました。

争いや不幸が起きる臨界を、雨が降る前の蒸し蒸しした飽和状態で表したかったんだろうけど、日本の蒸し暑さとは比較にならないほど、山岳地帯はカラリと乾いて爽やかで、逆に恵みの雨にみえました。地域によっては雨も太陽の日差しもイメージが異なるから不思議です。

メタファーや構造を読み解くのが好きな人にはおもしろいかも。
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