オトマイム

ビフォア・ザ・レインのオトマイムのレビュー・感想・評価

ビフォア・ザ・レイン(1994年製作の映画)
4.2
暴力描写は必要最小限だけれどメッセージはまっすぐ胸に届く。民族とか宗教とか国籍とか言語とかをはぎとったあとに残る人間のいちばん美しい部分を淡々と静かに描くことで、それを理不尽に失う時の悲しみを際立たせているのがすばらしいと思った。

意表をつく円環構造のプロットは見事でたいへん見応えがあるし、マケドニアの美しい自然やそこに暮らす人たちの描写も印象的だ。そしてマケドニア人とアルバニア人の、飽くことなく続く民族間紛争の悲惨がていねいに提示されている。憎しみと、銃殺。その産物は新たに生まれる憎しみと悲しみであり、その果てしないループだ。

恥ずかしながらこれまでマケドニアの位置さえおぼろげで、ユーゴスラビアから独立した国々の名前もよく知らなかった。本作はもっと世界を知りたいという糸口になったし、映画作品としてもすばらしかったので是非多くの人におすすめしたいと思いました!