ペコ

赤ちゃん泥棒のペコのレビュー・感想・評価

赤ちゃん泥棒(1987年製作の映画)
4.5
なんて爽快なオープニングなんでしょう。これが見たかったんです。アリゾナの地平線、陽気な音楽。最高!

これが初めて好きになれたコーエン作品。彼らが何を表現しているのかやっと分かったような気がしました。

何度見ても心躍る。楽しく、そしてちょっぴり切ない感動的なコメディー。

誰もが産まれる環境や親、赤ちゃんを選ぶことは出来ない。そもそも自分の意志でこの世に産まれてきたのかも分からない。けれど、産まれてしまったからにはとりあえず土を耕すか、誰かから奪って暮らすか、しなければいけない。
そして、子孫を残して立派な大人になろうとするのが古来からの人間のライフモデルであります。しかし、どう望んでも努力してもそうなれない人間がいる。どれだけ素晴らしいカップルでも赤ちゃんはできないし、盗むことしか能の無い人間もいる。
そんな人たちのための物語です。
そんな不条理を昇華するためにフィクションがあるわけです。

映画の中では、盗むことしか能の無い男がその才を活かして危機を脱したり、赤ちゃんが出来なくとも良いカップルになれたりします。

・脱獄犯が地面から這い出るシーンはおそらく出産の隠喩でしょう。
・ベッド下に赤ちゃんが潜ってしまう序盤のシーンを覚えておくと、終盤近くでニンマリできます。

少々南部志向な内容ではありますが、資本主義も無理のあるシステムだよなぁと改めて思いました。

最後の夢で目から目薬です。
ペコ

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