Kuuta

ファウストのKuutaのレビュー・感想・評価

ファウスト(1926年製作の映画)
3.8
ムルナウのドイツでの最後の作品。

天使と悪魔の最終戦争みたいなド派手なオープニング。メフィストがファウストを悪の道に落とせば神の負けだ、的な話になり、シーンは人間界に飛ぶ。

町を文字通り「包み込む」メフィストの不気味さ。悪魔が疫病として描写され、光と影が大暴れするのはノスフェラトゥと同じ。この冒頭30分くらいが一番面白かった。合成映像によるエフェクトが本当に素晴らしい。

ヨーロッパ的祝祭感って映画でよくあるけど、疫病に勝つには祈るのだ、うおおと信仰に突っ走る熱量が強烈。疫病の恐ろしさから神を信じられなくなったファウストは、悪魔の力を頼って病気を治すが、それがバレたときの民衆の熱い掌返し。契約後、至る所にメフィストが現れ、ファウストは逃げ出すが、逃げても逃げても先回りされる。

欲望に負けて若返ったファウストが故郷に戻る中盤はやや退屈だった。グレートヒェンの叔母さんとメフィストによるコメディが始まるが、映像的には普通な印象で、あんまり乗れなかった(急にコメディをぶっ込んでくる展開は「サンライズ」と同じ)。

グレートヒェンを演じる女優がとても綺麗で、メフィストに嵌められた彼女の悲劇に集中していく終盤は再び緊迫感が高まる。牢屋での振る舞いは完全にホラー。

2人の愛が肯定されるラストの展開は、ちょっと強引な感じが否めない。ムルナウの気合とやりたい事は伝わってきたが、エンタメとして更に洗練させたのが翌年公開のサンライズなんだろうなという印象を持った。76点。
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