鋼鉄隊長

処刑ライダーの鋼鉄隊長のレビュー・感想・評価

処刑ライダー(1986年製作の映画)
4.0
BS放送にて鑑賞。

【あらすじ】
アリゾナの田舎町ではパッカード率いる暴走族が夜な夜な山賊まがいの手段で高級車を盗んでいた。そんな町ではかつてジェイミーと言う青年が彼女の前で斬殺されていた。それからしばらくして、旅人ジェイクが町を訪れる…。

 「自動車ホラー」と言う映画ジャンルがある。その名の通り自動車が題材のホラー作品のことだ。その定義は妙に細かく、車がオカルトな原因で暴走した場合のみ自動車ホラーに該当される。なので『激突!』(1971)は自動車ホラーに含まれず、幽霊車が登場する『ザ・カー』(1977)が元祖とされている。また『クリスティーン』(1983)や『地獄のデビル・トラック』(1986)など、なぜかスティーヴン・キングが好んで題材にしているジャンルでもある。そして自動車ホラーの最大の特徴に「ちっとも怖くない」と言う共通点が存在する。これがもう本当に全く怖くないのだ。しかもグロテスクな描写も殆ど無い。もはやホラーと呼んで良いのか疑問に思うほどだ。
 そして『処刑ライダー』もこの奇妙奇天烈な映画ジャンル、自動車ホラーに分類されている。この作品は自動車ホラーの中でも群を抜いて奇抜。怖くないどころか笑えるのだ。意味もなく近未来的なデザインの幽霊車(ターボ・インターセプター)と予想以上に乱暴な復讐方法。果ては工業油をキメてゴキゲンになるチンピラ暴走族と、中々にハチャメチャな内容となっている。特に幽霊ドライバーのロボットっぽい見た目は、フルフェイスのヘルメットを被っているので頭でっかちのチビに見える。このダサいのかカッコいいのか微妙なのがたまらなく良い! おそらく邦題を付けた方は、この姿を見て「ライダー」と名付けたのだろう。このとぼけた邦題もハチャメチャさに拍車をかけている。
 一方で気になる点もある。なぜ復讐された者は両目を奪われるのか?なぜ復讐する度に車の部品が一つずつ消えていくのか?揚げ足を取るつもりはないが、どうも奇妙な要素が多い。それらを真面目に考察しようかと3日ほど考えたが、結局止めた。だって考えれば考えるほど不穏になるのだから。警察は真面目に捜査しているようにみえて、台詞は復讐を容認するかのようにも聞こえる。復讐を果たしてからターボをプレゼントするのは、罪を擦り付けることが目当てではないだろうか。彼女を後ろに乗せてバイクを走らせるラストシーンも、眼前にある異様に大きな月が不気味なほどに輝いて見えることから、もしかしたら彼女をあの世に道連れにしようとしているのかも。自動車ホラーって深く考えると実は怖いのかもしれない……。
鋼鉄隊長

鋼鉄隊長