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疵のdaiyuukiのレビュー・感想・評価

(1988年製作の映画)
4.0
昭和30年代の渋谷。生涯一度も銃や刃物を身に付けず、常に素手で相手を叩きのめし、ヤクザの間で"死神"と恐れられた男・花形敬(陣内孝則)。
強すぎるために組織からもハミ出し、純粋で一本気な性格故、ヤクザらしいヤクザにもなれず。暴力の中で、常に友を求め、人肌の温もりを求め続けながら33年の短い人生を閉じた花形の半生を高度経済成長時代の東京を背景に描く。
本田靖春のルポルタージュ「疵 花形敬とその時代」を元にしたヤクザ映画。
花形敬(陣内孝則)は、少年時からすでに不良として名が通っていた。
いつも相棒の松田(ジョニー大倉)と一緒で、ふたりは成人しても定職をもたず場末のクラブに出入りしては気ままな暮らしを送っていた。
花形はそのクラブでピアノを弾く美佐子(藤谷美和子)に一目惚れして、結婚した。
同じ頃、花形と松田は新興ヤクザ・安藤組が経営する渋谷興業の組員となった。
持ち前の度胸とケンカで敵対組織と渡り合い、花形は大物になっていく。
やがて美佐子が妊娠、彼女はヤクザから足を洗うよう頼むが、花形にとってヤクザ稼業は生きがいだった。
しかし、美佐子の不安は現実となり、花形は傷害事件を起こし、刑務所へ服役することになる。美佐子は子供のために愛する花形と別れる決心をし、彼は獄中で離婚に応じた。
出所後世の中は一変していた。松田は安藤組の大幹部となり、ヤクザ社会も喧嘩よりビジネスの時代になっていた。
しかし、喧嘩に明け暮れる花形は再び傷害事件を起こし、対立する組に追われることになる。逃走の途中、花形は美佐子と再会、息子と対面を果たした。
が、やがて花形は凶弾に倒れ、33歳の人生を終えた。
花形敬というステゴロ・ヤクザをご存知だろうか?戦後、愚連隊として持ち前の度胸と腕っ節で名を売り、渋谷を牛耳る安藤組の幹部としてさらに数々の武勇伝を残し、あの力道山も花形を恐れたという化け物じみた逸話は、「グラップラー刃牙」のキャラクター花山薫の元ネタとなった。
持ち前の度胸と腕っ節で進駐軍相手のシノギを削った愚連隊時代から、安藤組の傘下に入り敵対組織から武器を強奪したり引き抜かれたホステスを奪い返したり荒仕事で名を売り、ケンカではなくシノギつまり金儲けの才がモノを言う時代の変化についていけず、非業の死を遂げるまでを花形敬の生涯を、荒々しい暴力衝動と母や妻に対するナイーブな優しさの二面性、花形敬の「強さ」にこだわる原点など人間性を掘り下げつつ、数々のエピソードを絡めて描いていて、ナイーブさと暴力的な部分を合わせ持つ花形敬をスタイリッシュに演じる陣内孝則のカッコよさが際立つヤクザ映画。
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