つのつの

反撥のつのつののレビュー・感想・評価

反撥(1964年製作の映画)
3.9
悪魔のいけにえにおける扉が閉まる絶望も
黒沢清映画の不穏な風と廊下も
デビッドリンチのような悪夢的イメージも
RAWにおける髪を食べ嘔吐する主人公も全部元ネタはこの映画だ!

それぐらい観客にインパクトとトラウマを植え付ける名作。
今見ても凄まじく怖い。

この映画の怖さの源泉には「丁寧さ」がある。
地面や壁のひび割れが
帰宅時に出会う気持ち悪い作業員が、
あるいはもっとシンプルに秒針の音や暗い廊下の奥の不穏さが主人公の神経を逆撫でしていく。
「反復」と「差異」の繰り返しで観客を狂気の世界に引きずり込むポランスキーの演出は、あまりにもオーソドックスだ。なのに怖い。
道端にいた小人の楽団の音が聞こえるなあと思って窓の外を見たら………のくだりとか泣きそうになった。

主人公が狂ってしまった後も監督は執拗と言えるほど丁寧に彼女の狂気を描写していく。
コンセントが外れたままのアイロンなんて、黒沢清のCUREにおける空っぽのまま回り続ける洗濯機に間違いなく影響を与えてるはず。
だが何より彼女から見た部屋が寸法がめちゃくちゃになってるというシーンが凄まじい。
完全に狂人の見ている世界がそこにあるからだ。

エンディングでは、ホラー映画の定石通り何も解決しない。
全てが混乱に満ちたままカメラは、ある人物の瞳の中にクローズアップしていく。
そういえば本作は、カトリーヌドヌーブの不安げな表情が何度も大写しになる。
それは彼女の精神的不安を煽る演出とも取れるが、監督の趣味が丸出しなだけな気もする。
なんにせよ長編デビュー二作目でこのクオリティとはポランスキーやばいとしか言いようがない!
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