ninjiro

反撥のninjiroのレビュー・感想・評価

反撥(1964年製作の映画)
4.4
捻れたハンモックに引っ掛かったような形容不明な場所から猿に似た大きな影が仰け反りながら叫んでいる。それを浴びる側はアクアリウムの中にでもいるように、常に外側よりも強い圧力の中にあって、深く潜っても、浅瀬に餌を探しても、一旦何かを介して外界を知ることとなる。
水の中といえどそこは不浄の場所ではなく、肌や肉、血液が呼ぶ老廃物がそのまま伝播して直接触れて、相手の放つ思念を受信するアンテナが折れて潰れる音は確かな重量をもって直接関係のない他者にも伝えられ、限界まで遮断された意識の境界線は、決壊と共にその叫び声が本来持っていたはずの当たり前の力量の何乗もの力で縦横無尽に氾濫する。
足取りは酔ったように、目線はまだ正面に、信じられる解釈は幾らでもあるけど、それを信じたとて私自身は何にも癒されることはない。
死骸はハンモックにだらし無くぶら下がって、乾涸びて異臭を放って、私に死んで欲しいと思う人々の意識のように、何度でも殺された私の仰向けの肢体は、まだ救いを求めているようにあなたに映るだろうか。
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