「笑いな、クソ野郎!」
アメリカ東海岸の小さな観光地、アミティに赴任したばかりの警察署長マーティン・ブロディ。
ある日彼のもとに、浜辺に女性の遺体が打ち上げられたと連絡が入り現場に急行する。
検死の結果、死因は鮫の襲撃によるものと判明。
ブロディはビーチを遊泳禁止にしようとするが、市長は観光業への影響を懸念し同意しない。
一旦は引き下がるブロディだったが、後日少年が鮫の餌食となり、少年の母親が鮫退治に懸賞金を懸けたことで、鮫の噂は広まってしまう。
平穏な海水浴場に突如出現した人喰い鮫と、賞金目当てに集まる輩たち。
一向に成果が出ない状況に、遂にブロディと漁師クイント、海洋学者フーパーの三人の男が鮫退治に乗り出すこととなるが...。
鮫への恐怖心とスティーヴン・スピルバーグの名前とジョン・ウイリアムズの楽曲を、世界中の観客の心に刻み込んだ作品だ。
子供のころ、『JAWS』って鮫のことだと思っていたのだが、実は「顎(あご)」のことだと知り、その命名センスに脱帽したものだ。
観光収入を当てにする小さな町を舞台に、政治的に複雑に絡んだ人間関係のなか、被害が徐々に大きくなってゆく状況は想像に難くなく、それ自体も恐ろしい。
物語は小さな漁船の上での描写を中心として進む。
鮫退治に命を賭ける意義も異なり、狭い漁船の上で当初はいがみ合っていたブロディ、クイント、フーバーの三人。
だが、一つの目的に向かって力を合わせるうち認め合い、兼ねてからの戦友のようになっていく様は心に響く。
また、鮫退治を生業とする漁師クイントが、戦時中に撃沈された巡洋艦インディアナポリスの乗組員であり、海に投げ出された彼らが鮫の餌食となっていったという述懐のシーンには引き込まれる。
鮫へのトラウマを心に追いながら、鮫のことを知り尽くし、鮫への恐怖と向き合いながら鮫と闘う姿は強く心に残る。
そして巨大な人喰い鮫との死闘の果て、ボロボロの船のマストの上でライフルを構えるブロディ。
決着は少々呆気なくもあるが、あの爽快感はぜひ観て感じて欲しい。
ハナマル!
2021/07/13