囚人13号

パルプ・フィクションの囚人13号のレビュー・感想・評価

パルプ・フィクション(1994年製作の映画)
4.0
再投稿、またもやの大音響。記憶から抜け落ちていたトラボルタが腕にヤクを注射するショットとハイのまま運転してる様子のモンタージュ、『妖怪巨大女』のポスター、マーティン&ルイスの5$シェイク、生焼けのダグラス・サークステーキ。

例のホーソーン・グリル、これはやはり作家のナサニエル・ホーソーンから来てるらしく、彼が生涯追求し続けたテーマである人間の道徳観念や神の赦しについては『パルプ・フィクション』の主題と共鳴する。
このレストランは神の恩恵を受けられる最後の砦であって、例のカップルはこの先悔い改めるだろうし、L・ジャクソンも悟りを開く懺悔の旅に出る一方で神を嘲笑い、ギャングを辞さなかったジョン・トラボルタはご存知の通りトイレから出てきたところを蜂の巣にされる。

この極めて出鱈目な未編集物語、或いは乱丁/落丁したパルプ雑誌の如きフィルム質感が観客の知的好奇心を捉える秀才ぶり、一見すると偏差値が低いだけの世界に秘められているインテリなアイロニーが素晴らしい。丁寧に織り込まれた構造から言って、つまり我々はレストランのシーンよりも先にトラボルタが穴だらけにされる場面を見ているからこそ優位性に気付ける。

まあ実際この神様云々という主題も説教臭いことこの上ないのだが、こいつらとは無関係だと言わんばかりの被害者ヅラで物語に堂々と(わざとらしく困惑しながら)割り込むタランティーノの図太さは常に想像を超えてくる。
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