フランソワ・トリュフォー監督の遺作。
不動産屋の元秘書が、社長の殺人容疑を晴らすべく、事件の真相を捜査する。
「女は魔物だ。私は魔に憑かれた。」
ヒッチコック・サスペンス風のwhodunit型殺人ミステリー×ロマコメ。罵り合いながらも協力するメイン2人の関係性、夫婦漫才みたいな軽快な掛け合いは、スクリューボール・コメディのようだった。
トリュフォー監督は女性を魅力的に撮ることに長けている。本作の主演はトリュフォー監督の当時のパートナーだったというファニー・アルダン。社長(ジャン=ルイ・トランティニャン)に密かに想いを寄せる秘書兼素人探偵役。キャサリン・ヘプバーンを想わせるような、凛々しく、聡明で、溌剌とした女性キャラクターだった。オープニンクレジットの軽やかに颯爽と歩く登場シーンから心を掴まれた。舞台衣装やスカートからすらっと伸びる美しい脚にドキッとさせられる。
トリュフォー作品には、いつも心を動かす音楽がある。本作で、音楽家ジョルジュ・ドルリューの存在を初めて認識した。
ヒッチコックの影響?トリュフォー監督は、ブルネットではなく、ブロンド美女を好む傾向にある。ベルセルがマンションの外壁沿いを伝って渡るシーンは『裏窓』っぽい。
モノクロ映像がスタイリッシュで美しい。影ではなく、光が印象的。撮影監督は、トリュフォー作品、エリック・ロメール作品の常連で、テレンス・マリック監督『天国の日々』でアカデミー撮影賞を受賞したネストール・アルメンドロス。
映画座でキューブリック『突撃』。
冒頭、狩猟場での映画館経営者銃殺シーンに出てくる〈ポルシェ911〉が抜群に格好良い。
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