MasaichiYaguchi

第50回全国高校野球選手権大会 青春のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.6
今年は夏の風物詩である甲子園での熱戦がなくなってしまったせいか、高校野球をテーマにしたこのような作品を観ると、改めて高校球児にとって、そして試合を“現地”又はテレビのモニターで観戦する我々にとって「甲子園」とは如何なる存在なのか向き合いたくなる。
1964年に開催された東京五輪の公式記録映画を手掛けた市川崑監督が、朝日新聞社と高校野球連盟の全面協力の下、第50回全国高校野球選手権大会をカメラに収めた本作は製作から50年以上の時を経ても、映し出された「甲子園」の持つ魅力や本質は変わらない。
市川崑監督は単純な記録映画にすることなく、甲子園出場を目指して練習に励む球児たちを全国規模で、夫々のロケーション、夫々の練習方法を興味深く紹介していく。
甲子園の“本番”においても、球場に120人のスタッフで20数台のカメラを駆使して選手や応援している生徒の表情や、決定的な瞬間を捕らえていく。
その映像も当時としてはかなり斬新な“切り取り方”で、臨場感たっぷりに見せていく。
本作に参加しているスタッフも、脚本で詩人の谷川俊太郎さん、音楽で山本直純さん、ナレーターで芥川比呂志さんと当時トップクラスの人々が参加している。
このドキュメンタリーを観ると、やむを得なかったとはいえ今回の中止が高校球児を中心に「甲子園」を目指していた者にとって、どれ程の“痛手”だったのか分かって胸が潰れるような思いがします。