ちろる

ヒトラー 〜最期の12日間〜のちろるのレビュー・感想・評価

ヒトラー 〜最期の12日間〜(2004年製作の映画)
3.7
ヒトラーだけの最期の話というわけではなく、全面降伏までのヒトラーの側近たちの含めた群像劇。
ブルーノ ガンツ演じたヒトラーは今までま数々の役者が演じてきたような圧倒的な支配者としての側面ではなく、ソ連に追い詰められて裏切られ始めた弱さと人間味を帯びたヒトラーの姿を演じていて、この描き方に賛否両論あったのも無理はない。
まぁ、普通の人間らしい側面を持っていたからといって感情移入できるわけではないし、自分の側近達への労りの言葉と、女性に紳士的な優しい眼差しを与えるその一方で、思い通りにならないと突然癇癪を上げ、時にナチの為に戦う民間兵に対してゾッとするような冷たい感情と、ユダヤ人虐殺を肯定するような理想論を語る姿が、紛れもなく彼がサイコパスな支配者だったことを容易に想像させる。
でもそれよりもこの作品で恐ろしいのは、沢山の側近たちへがこのヒトラーの語る理想論を狂信的に正しいと信じ込んでいたことだ。
この物語を語った個人秘書ユンゲは今の時代こそヒトラーが怪物だったのだとインタビューで語っているが、彼女もまた家族を捨ててでもヒトラーと共に生きようと彼に忠誠を誓ったほどの信者の一人でもある。

包囲されたベルリンの中では様々な人間の業が渦めく。
脱出を試みるもの
思考停止するもの
快楽に興じるもの
追い詰められて心中するもの
などなど、、、
ヒトラーやその側近たちが地下壕に息を潜めその先行きを議論する間にその裏でヒトラーの信念を信じて「ヒトラー ユーゲント」として命をかけて防衛戦で戦う少年少女たちが使い捨てのようにされて命を失った事、そしてゲッベルズ夫妻の6人の子供たちのように親の思想によって訳もわからずに失われた幼い命が多数あったことに対してきっとヒトラーは生きていても何も感じることはないのだろう。

語り部となったユンゲは言った。
若かったから、知らなかったからでは許されない。自分が間違いなくあの怪物の片腕であり、忠誠を誓ってしまった信者であるという恐ろしい事実を語ることは勇気がいることだと思う。
ドイツの歴史の中で最大の過ちでもある足枷について、彼女が亡くなる前にすべて語ることがでにたことは良かったと。

因みにミサイルが発射された今日だから言う。お願いだあの北朝鮮のあいつ。早くこのヒトラーのように地下壕で追い詰められて自害してほしい。だれも迷惑かけずに、、、
ヒトラーを持ち上げるつもりは全くないけれど、彼はきっとヒトラーほどの自害するようなそんな覚悟もないのだろな。
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