穂苅太郎

ヒトラー 〜最期の12日間〜の穂苅太郎のレビュー・感想・評価

ヒトラー 〜最期の12日間〜(2004年製作の映画)
3.8
妄信と同調圧力と権威主義と劣等感。
とにかく人間として最悪な状態とは何かを徹底して一人の人格に集約させる。イスラエルからはまだまだ美化していると批判もあったと聞くが、丁寧に神経使ってあらゆるヒトラーからは人間性を排除していると思う。結婚や友情すらも。
つまりドイツはこの一人に歴史の汚点と責任のかなりの部分を背負わせることで立ち直ったかのようにも解釈できそうな最後の最後で、当の原作者から語られるすべてのドイツ国民の責任があると語られる。これを相対化、共有化できるかどうか。日本との差がありありと見れた。翻って責任の所在の問題提起がいまだにできない日本のふがいなさは、「かつての空気」としてしか責任主体をとらえようがなかったところにその不幸がある。いまだに、だ。
ベルリンの戦闘シーン以外はほぼシェルターのごとき総統官邸でストーリーは進んでいく。この閉塞感と絶えない爆撃の音で狂気がつづられていく演出が見事。
穂苅太郎

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