踊る猫

チェイサーの踊る猫のレビュー・感想・評価

チェイサー(2008年製作の映画)
3.9
むせ返るような暴力描写の陰惨さは良く伝わって来る。血と汗の匂いがする。これは只者ではない……そう思って前のめりになって観てしまったのだけれど、展開に無理を感じる。幾らなんでもあの場面で気づかないはずがない。「そこを見逃すのかよ」「そこでまだ生きてるのかよ」とツッコミどころも感じないでもなかった。韓国での実話がベースらしいので、そのネタ元の事件を知っている人にはその警察側の無能ぶり(あるいは官僚的な組織の体質がもたらす堅苦しさ)が理解出来るのかもしれないけれど、暴力に頼り過ぎているので如何せん裏社会での主人公とデリヘル嬢との関係が説得力を以って描かれていない印象を受ける。何故彼女に主人公の元刑事が執着するのか? それをもう少し踏み込んで描けば傑作になったのではないかと惜しまれる。いや、その血縁関係を超えた愛情もまた韓国らしいと言われればそれまでなのだけれど……韓国に関するこちらの無知が浮き彫りになった形か。
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