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チェイサーのギルドのレビュー・感想・評価

チェイサー(2008年製作の映画)
3.8
事実は小説よりも奇なり。と言える陰鬱で胸糞悪いフィルムノワール作品で、特に猟奇的な描写のエグさが強烈ですね…見終わった後に気が滅入ったかな。
レインコートキラーことユ・ヨンチョルのソウル20人連続殺人事件が元ネタですが、元ネタに負けない殺人の物凄い描写が散りばめられていてそこが一番の見どころだと思います。

 シリアルキラーのハ・ジョンウ演じるヨンミンの演技が凄くて、サイコパスな殺人鬼を素晴らしく全うしたと言っても過言ではないほど、彼のいるシーンから漂う緊迫感と殺人行為に度肝を抜くと思います。
元ネタのシリアルキラー兼カニバリズムたる要素は抜けてて(それも再現したら恐らく上映できないレベルだけど…)、若干の脚色が加えられているもののシリアルキラー/サイコパスの描写はハッキリ言って目が離せなくなる凄さを持っていて、見ててメチャクチャしんどいです。
殺人現場のSAW1を彷彿させる絶望感 / 道具の表面から見える狂気 / 中盤にあるミジンのいる空間のおぞましさは陰鬱/胸糞悪さを押し出した本作を担うシーンで良かったし、映画ラスト20分からの展開は本当に気が滅入るくらいに酷かったです…(良い意味で)

 ただストーリー展開が少し平坦でシーンの陰鬱/胸糞悪さが先行して二の次になっていた感がするのと、クズな面子ばかりで感情移入はし辛かったかな。あと後半からあるキャラクターのバカな行動で巻き込まれる展開が鼻について、そこが勿体ないと感じました。
基本的にフィルムノワールな展開で進むけど、部分的に笑えるシーンが仕込まれていてそこが意外かな。序盤にアウトレイジシリーズのようなやっていることは深刻なシーンだけど間抜けな姿でそれが進むデリヘルの下り、中盤くらいにある捜査のシーンで交渉する男の隣に東方Projectのポスターがあるギャップ萌え・・・など、意外と笑える部分があるので単にグロくて暗い作品ではないところが良かったです。
そして殺人の動機である絵描きの抑圧が垣間見えるシーン、虐待を受けた時の感情を暗喩するシーンなど殺人鬼にいたる経緯も映像で伝える説得力の高さがあって、そこも良かったです。

個人的には韓国の純正フィルムノワール作品の洗礼を受けた一作で、好きだけど人にはオススメしづらい部類に入るかも…
ナ・ホンジンの長編デビュー作品ですが、デビュー作品とは思えない貫録さがあって哭声も楽しみ!
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