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蜘蛛巣城のkojikojiのレビュー・感想・評価

蜘蛛巣城(1957年製作の映画)
3.7
1957年 監督・脚本:黒澤明 脚本:小国英雄、橋本忍、菊島隆三 
2022.09.29視聴-441 評価3.7
●三船敏郎(鷲津武時)
●山田五十鈴(浅茅)
●千秋実(三木義明)

 第16作 黒澤監督作品全30作の折り返し。
言わずと知れたシェークスピア「マクベス」
 
 ジャケにもある名シーン。ラストの鷲津が夥しい弓矢に射抜かれるシーンは迫力満点だ。この頃の三船の演技は最高潮に達している。アドレナリンが飛び散っている。流石の黒澤もこのシーンの三船には満足したのではないか。

 ホラーの要素も多分にある。実際、黒澤監督はローレンス・オリヴィエ(リチャード3世の監督)とお化け比べをすると言っている。

 小さい頃この映画の予告編を観たのだろう、あのもののけ妖婆が糸車を回しながら何やら歌を歌っているシーンは怖いものの象徴のようになっていた。だいぶ後にこの映画だったのかと思ったものだ。
 
 それに加えて山田五十鈴が怖い。鷲津を唆すシーンはよく「能」を意識した動きだと言われているが、このシーン、「能」の美しくさ以上にゾッとするシーンではなかろうか。
 山田五十鈴の存在感に圧倒されて、妻に弱い役柄もあるかもしれないが、三船が小さく見える。すごい女優だったんだと改めて思う。
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 謀叛を起こした敵を破り主家の危機を救った鷲津は、帰城途中に出会ったもののけの妖婆の予言通り大将に任ぜられた。その予言に沿って、武時は妻・浅茅にそそのかされて城主を殺害し、自ら城主となったが、妻は再び親友・義明を殺すことを迫る。

 欲と猜疑心の行き着く先は、狂気でしかない。人は疑えば疑うほど誰も信用できなくなるからだ。
 
 黒澤監督はこの映画では自分メッセージがないと言われるが、それはシェークスピアが言いたいことに同調していると考えればそれでいいと思うのだけど。

 実際、この映画で描きたいものはなんですか?の問いに対し、黒澤監督は
「マクベスには、弱肉強食の時代に生きた人間の姿が凝縮されている。この意味で私の他の作品に共通するものがある。」と言っている。

 それ以上に画家としての美に対する執着が際立つ映画だと言われる。確かに三船、山田の動きは「能」の動きを取り入れて美くしく、各シーンの構図が美しく、まるで絵画のようだ。
 この絵画のイメージは後の「影武者」「乱」でも強く感じた記憶がある。この比較は今後楽しみだ。

 ラストに山が動く種明かしが面白い。
「人は見たいと思うものしか見なえない」ということは、逆に見たくないと思っていると見えてしまうということもあり得る証かな。
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