ミサホ

蜘蛛巣城のミサホのレビュー・感想・評価

蜘蛛巣城(1957年製作の映画)
4.3
黒澤明監督作品4作目。

ふ〜、面白かった!
黒澤作品にしては短めの作品ですが、どろどろに濃いのなんの!まあ、三船敏郎の終始剥いた目と地鳴りのように響く低い声があってはそうなりますよね。

黒澤監督の一連の作品群は、観終わった時の満足感たるや他のどんな作品とも違う不思議な感覚なんです。

黒澤監督の作品を観ようと思ったのは、つい先日、NHKで黒澤監督の“能の美”というドキュメンタリー番組を観たのがきっかけ。

世界を驚かせる人は、こんなちっぽけな私のような人間でも同じように驚かせるし、楽しませてくれるのだなぁ…としみじみ思った次第。

これまで散々、白黒苦手とか言っていたけど、物語が面白ければ白黒かカラーかなんて関係ないんだってことが分かりました。色がついてたっておもんないものはオモンナイノダ!

さて本題。
権力に取り憑かれ、謀略、謀反を図り、ついには疑心暗鬼、四面楚歌に陥る男の物語。

三船敏郎演じる鷲津武時と盟友の三木義明は、勝ち戦の後、蜘蛛手の森に立ち込める濃い霧に阻まれ、進んではまた同じところに戻される。この繰り返しの描写に観ているこちらまで方向感覚が失われ、追い詰められる感覚に陥った。

この描写は最終的にはにっちもさっちもいかなくなる様を表しているのであろう。

森で2人は糸車を回す老婆を見る。
この老婆の出現すらにわかに信じがたいのに、不吉な予言まで聞く。そして、この時はまだその予言の不吉さに気付いていないのである。

ここから、運命の歯車が狂い出す。

老婆の予言通りに出世を果たした鷲津は、さらに女房である浅茅(怖い〜)に丸め込まれ、そそのかされ、自らの手を殿の血で汚し、城主となる。浅茅は、まるでカルト宗教の教祖のように鷲津を洗脳した。

この鷲津が狂気に囚われていく様を“能”で表現しているらしいのだけど、この作品とマッチしていたと思う。

鷲津は破滅の道をひた走る。
権力に溺れ、驕り、腹心さえも手に掛ける恐ろしい男の最期は、まさに蜘蛛の巣に捕らえられた獲物のように行く手を阻まれ、森に飲み込まれた。
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