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蜘蛛巣城のTSのレビュー・感想・評価

蜘蛛巣城(1957年製作の映画)
3.9
【老婆の予言に翻弄される武士】83点
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監督:黒澤明
製作国:日本
ジャンル:時代劇
収録時間:110分
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これは黒澤明監督の作品の中でも割と上位に入るかもです。特にラストの矢のシーンは映画史に残る名シーンではないでしょうか。シェイクスピアの『マクベス』を基にしている今作は中々救いようのない悲劇であります。主演はもちろん三船敏郎。黒澤作品の時代劇で彼がいないのは有り得ないですからね。

北の館の主の謀反を鎮めた鷲津武時と三木義明は蜘蛛巣城の城主に呼ばれることになる。その道中、彼らは不思議な老婆と出くわすのだが。。

夢か現か、得体の知れない老婆の予言を鵜呑みにすることにより数々の悲劇が起こっていきます。また、武時の正室である浅茅がかなりの厄介者であり、彼女の言っていることと老婆の予言が類似しているようにも見えました。やがて蜘蛛巣城の城主となった武時ですが、正室の浅茅に唆されて、信用できない家臣を次々と暗殺していきます。もうこれは悲劇の結末の序章でもあり、誰が見ても武時の惨劇は明らかでしょう。

当時としては破格のスケールで製作された今作ですが、中でも屈指の名シーンなのがジャケットにも映されている、矢を放たれるシーンです。これには驚きました。なんと、本物の大量の矢が武時に襲いかかるのです。実はこれ、弓道の師範がやっているわけでもなく、弓道部の学生がやった模様。面白いエピソードとして、三船敏郎はこのシーンが嫌すぎて撮影前日の夜全く寝れなかったというものがあります。そして、そのシーンの撮影が終わると、あまりの理不尽さに三船敏郎は黒澤明に怒鳴ったらしいです。瞬間的とはいえ、あの黒澤明にこれほどの態度をとれるのも彼くらいではないでしょうか。しかし、その結果素晴らしい映像が残りました。これは必見。三船敏郎のあの恐怖の表情は多分本物でしょう。

正室の浅茅の発狂ぶりも凄まじく、『羅生門』を彷彿させられました。他の黒澤明の時代劇が有名な分、今作は少し存在が薄くなりがちですが、まだわかりやすい内容であるため良いかと思われます。序盤の音声が少し聞き取りづらいのが難点かもですが、それは黒澤明の作品では結構あることなので仕方ないでしょう。
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