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蜘蛛巣城のkoyamaxのレビュー・感想・評価

蜘蛛巣城(1957年製作の映画)
4.5
今作は霧。霧に始まり霧に終わります。
徹底的に霧の中の世界です。
個人的にはその徹底的が観たいところではあります。

出口のない森、一寸先に進めば、姿が見えなくなってしまうほどの濃霧。そして霧の中から現れる黒いシルエットの城。様々なものを想起させるこの導入のシーン。
霧と森、不安定な様子を徹底して表現していて、ここだけでも見応えがあります。

この作品を時代劇と捉えるべきではありませんが今作に限らず、黒澤映画の時代劇は一貫して日本に見えませんね。。今回はドストライクに異界です。

マクベスの物語をベースにしていますが、
霧、森、荒涼とした風景に建つ城の風景が圧巻で、そこで語られる物語も黒澤監督画描く巨大な画のパーツのひとつに過ぎない気がします。。

もののけとおぼしき老婆の言葉をきっかけに、人を信じられなくなり
やがて狂い破滅する武将の話ですが
日常を感じさせるシーンなどひとつもなく
霧の中は最初から異界の様相を呈してます。下界から閉ざされたかのような霧の閉塞感は猜疑心により味方をも信じきれず
自滅する末路をたどる人間の閉ざされた心象風景のようです。

妻、浅芽の静かに狂ってゆく様子。
そして味方に弓矢を射られる事になる武将の最期、逸話も含めここも有名なシーンですが、狂気と恐怖の表情は凄まじいです。
またいつになく客観的な視点も多く人間の愚かしさが強調されているようにおもえます。

これまで観てきた黒澤作品には、明確な一枚の画が存在してました。
その一枚画が毎回圧倒的なのです。

霧。城。欲と理性の狭間で揺らぐ運命。
今作も一目では見きれるはずがないような巨大な絵画のような圧です。
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