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飾窓の女のRのレビュー・感想・評価

飾窓の女(1944年製作の映画)
4.6
最近自分のなかで下火になりつつある古い映画を見ていこうシリーズを復活させねば、というわけで、今回はフリッツラング監督のこの作品。大して期待してなかったんやけど、これは大当たりだった! まずお話から説明すると、妻と子ふたりを持つ中年のおっさん(40ちょい過ぎくらいと思われる)ウィンレーは、大学で犯罪心理学の教授をやっている。家族が避暑に出かけるということで独身気分を味わう彼は、友人とクラブで飲酒を楽しんだ後、隣の建物に飾られている美女の画に見惚れていると、ガラスにボーッとその美女の姿が重なって映るではないか。振り向くと、その絵画のモデルが立っており、名をアリスという。自宅にもさらに何枚か彼女がモデルの絵があると彼を飲みに誘い、彼女のお宅へお邪魔することに。結婚以来はじめてのワンナイトスタンドにワクワクのウィンレーだが、絵を眺めながらメローにしてると、突如、見知らぬ男が乱入してきて、アリスを殴り、ウィンリーに襲いかかって絞め殺されそうになるが、彼にハサミを手渡すアリス、覆いかぶさる男をハサミで滅多刺しに!!! 殺ってしまいましたお二人さん。このまま警察に連絡すれば、正当防衛でいけるはずであろうが、それでは妻子にコトを知られずには済ませるまい。ということで、アリスには宅のすべての証拠を隠滅するよう命じ、自分は死体を運んで遠く離れた場所に捨てるのだが、その後、なんと、ウィンレーがクラブで飲んでた友人の一人が地方検事で、この人がこの事件担当になったと言う。このことでこの事件、非常にややこしい事態に陥ってしまう。で、ここから効いてくるのが、ウィンレーが犯罪心理学の教授だということ。うまいこと疑われることなく、友人検事から調査の進展を聞き出し、巧みに彼の目を欺こうとする、ウィンレーの鮮やかな手腕を楽しもう、というつもりが、まぁコロコロ面白い方向に話が進んでいく。ブラックなユーモアをところどころで利かせながらテンポ良く進んでいくストーリーテリングの妙がすばらしく、いっさい無駄のないスーパータイトな展開。一瞬たりとも気を抜けるところがない。そして、俳優さんたちの演技のすばらしいこと!!! まずウィンレー演じるエドワードGロビンソンという人、めちゃくちゃ変な顔してて、いかにも心の中でやましいことばかり考えてそうなつまらぬ凡夫にピッタリの風貌。もう40過ぎてるんやから落ち着かなくては、みたいな話を序盤で友だちとしてて、今の時代の40歳ってこの頃と比べると若いなーと思った。40過ぎで落ち着くとか現代では早過ぎるわ! そして、魔性の女アリスを演じるジョーンベネットは、男の人生を振り回すファムファタルというには若干インパクトに欠ける感じが逆にリアル。訳のわからん愛人がおったり、40男を深夜にお家に入れたり、自分で不幸を招き入れているとしか言いようがない。こういう人って現実にもよくいるよね。だいたい不運を被る人たちって自分からそっちに直行してるイメージが。で、さらに面白いキャラクターがいて、殺人の事実に気づいて彼らの邪魔をしに来るのです。この人がなかなかいい悪役ぶりしてて、大したキャラじゃないのに不思議と印象に残る。この人とふたりで対峙する自宅シーンは本作のハイライトのひとつでしょう。アリスのギラギラした衣装も面白いし、彼女の策略の展開もイイ! あと、面白いのが、頼りになるはずの犯罪心理学教授である肝心のウィンレーが、愚かなる凡ミスしまくるところ! このおっさんアホやん! いやいや、これ明らかにキャラ設定のミスなのでは、と勘繰っていたら、そのすべてをばばーーんと覆すまさかの展開。空いた口が塞がらない! けど、分かる! めちゃくちゃ分かる! 僕もこういう経験2、3回ある! 同じような○を○た経験ある! そのなかでは僕もこのおっさんと同じくらいアホな凡ミスして、警察から電話かかって、心臓が止まるかと思った!!! その経験を思い出して、ニンマリしてしまいました。そーか。そーゆーことか。それなら納得やわ。いやー、面白かった! 展開の面白さにグイグイ引っぱられて楽しかった! そして、OZ的エンディングも良かった! ほんとにこういうことにならないよう、くれぐれも気の迷いを起こしてはならなき。で、40過ぎぐらいで落ち着いてもほんといけない。落ち着くとしたら70くらいでええんちゃうかな。いや、死ぬまで落ち着く必要なんてない。
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