TAK44マグナム

エクスタミネーターのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

エクスタミネーター(1980年製作の映画)
2.8
映画秘宝で活躍し、最近はラジオ番組でも映画を語るなど活動の場を広げているライターのギンティ小林氏のギンティは本作の主演俳優であるロバート・ギンティからとったものです。
倉庫でバイトしていた小林氏がロバート・ギンティ好きで、彼について熱く語っていたら仕事になったそうですが、ロバート・ギンティ好きでなかったら、もしかしたら映画ライターにはなっていなかったかもしれません。
そんな風に人ひとりの人生をも変えてしまうほど熱い男、ロバート・ギンティが一世一代の当たり役を得た映画(そして、そのせいでイメージが定着してしまい、本来はアクション俳優ではないのにB級アクションに出続けて亡くなった)が、「エクスタミネーター」なのです!

始まるといきなり、大爆発と共に人間が降ってきます!
なんだなんだと思っていると、そこはベトナム、地獄の戦場だったのです!
北ベトナム兵に捕まったジョン(ギンティ)は、すんでのところで戦友マイケルに助けられます。
ここのシーンは、かなり有名な首チョンパがあります。
いま見てもレベルの高い特殊効果を使っていて、本当に人の首を切り落としたように見えたってことで当時大変話題になりました。
スタン・ウィンストンが担当したんですが、さすが良い仕事しますねえ!
あまりにもリアル過ぎて、アメリカではカットされちゃったみたいですけど・・・(汗)

時は流れてニューヨーク。
食料品倉庫で共に働くジョンとマイケル。そこへ不良どもが盗みにはいったので、マイケルが叩きのめします。
すると、翌朝、不良たちがリベンジにやってきてマイケルは脊髄をやられて動けない身体にされてしまいます。
怒り狂ったジョンは、不良たちをM16で撃ち殺したり、生きたままネズミに食べさせたりして復讐開始!
この復讐に至るまでのつなぎのカットが全く無く、いきなり不良を捕まえて火炎放射器で脅迫するシーンになるのでビックリしました!

そんなこんなで悪党をぶちのめすことに目覚めたジョンは、よせばいいのにテレビ局に「俺は処刑人だ!」と手紙をおくったりしちゃいます。
普通なら、ここで世間の声をひろうような演出があったりするものなのですが、そんなものは無いので、結局、市民が処刑人のことをどう思っているか?が分からない。これはちょっと不満点ですね。「どんどんやれ!」という意見や「やりすぎだ!」という意見もあって、賛否両論になっていたりすれば物語にも深みが出るのではないかと思いますが・・・

この後は、悪党を人間ミンチにしたり、火炙りにしたりとやりたい放題が続きます。
完璧にタクシードライバーからパクったようなシチュエーションがあったりしますよ。

ジョンを追うのが市警のダルトン刑事。そしてCIAまで出てきます。
ダルトンは、あまり仕事をしないで、いつもマイケルが入院している病院の女医といちゃついている場面ばかりなんですが、このダルトンと女医のロマンスは、はっきり言って時間の無駄であり必要ありません!
ちょっとだけジョンと絡むことにはなりますが、直接的にダルトンや女医がジョンと関係が出来るわけじゃないし、そもそもジョンとダルトンの面識があるのかないのかも良く分からないのに、ラストではお互いに知った顔風になっているのは何故なんだろうか!?
さっぱり分かりません。何度みても、意味不明です。

個人的に長年いだいてきた疑問がもう一つあるのですが、それは何 故に主役がロバート・ギンティなのか?なのです。
失礼ながら言っちゃうと、ギンティはどう見ても強そうには見えません。どこからどう見ても「ベトナム帰りのすごいやつ」には程遠いルックスだし、実際に劇中でもどちらかというと冴えない感じなんですよ。
ベトナムでも助けられける側だし、倉庫で不良にからまれた時も助けられる側です。
処刑人として活動開始しても、ほとんど闇討ちばかりだし、やることなすこと行き当たりばったりだし。
犬には襲われるわ、バイクに乗ればコケるわ、スタローンやシュワが演じたような強いヒーローには全然見えないのが本作最大の欠点だと思っていたんです。
ところが、ジェームズ・グリッケンハウス監督のインタビューを見て、その疑問が解消されました。
どうやら、監督はジョンを強い男とは描きたくなかったらしいんですね。どこにでもいる平均的な男が怒りにかられると何をしでかすのかを描きたかったので、わざとギンティをキャスティングしたみたいなんです。
なるほど、そう言われればピッタシです!
でも、肝心の演出がダルいし、脚本も雑と言わざるおえないし、ギンティの演技も、監督の意図を100%表現できているとは到底思えないんですけどね・・・(汗)

ちなみに、監督はインタビューで、「ランボーはエクスタミネーターの続編だと思っている」とか「ランボーというキャラクターは本作をみて思いついたに違いない」などと、とんでもない爆弾発言をかましていますよ!
すげえ思い込みだなあ!
あと、冒頭のベトナムの場面で使ったロケ地が「トワイライトゾーン」でビック・モローが亡くなったところと同じという話題が出て、「わたしは関係していないが」とか言っていますが、言われるまでもなく分かっていますよ!と、思わずツッこんでしまいました。

最後に、「エクスタミネーター」で記憶に残る名場面というと、首チョンパ、人間ミンチ、火炙りで焼かれた死体、不良に襲われるお婆ちゃん・・・などなどたくさんありますが、一番はと言うと、やはり水銀弾製造シーンでしょうか。
ジョンが、破壊力の高いマグナム弾を更に強化するために弾頭に穴をあけて、せっせと水銀を流し込むという場面ですが、その様子を必要以上に描写するんです。じっくりと、念入りに。
ここを見せたいんだろうなあ、というのは凄くよく分かるのですが、他にもダルトンが銃を用意する場面も丹念に描いているところからして、監督って実はガンマニアなのかな?と思ったりしました・・・けど、インタビューでは暴力は好きじゃない感じでしたので本当のところはどうだか分かりません。

自警団、そしてベトナム帰還兵問題とくれば、やはり「タクシードライバー」を相当に意識しているとと思われますが、ラスト付近の雰囲気は「狼よさらば」も参考にしているかもしれませんね。
しかし、そのどれにもレベルが達していないのが哀しいところ。
どうして世界中でヒットしたのか・・・20世紀最大の謎と言っても過言ではないでしょう!
だって、テレビ用映画並の出来にしか見えないんですから・・・

そんな映画でも、何ヶ月かすると続編もブルーレイが発売されるとの事で、この機会にブルーレイで揃えようと購入してみたんですが、HDリマスターしているとは言えど、かなり画質は厳しく、音はロスレスではあっても只のステレオでしかないという残念仕様でした。監督インタビューは楽しめましたけど。
でも、いいんです!
パート2は、更に漫画チックになってて超くだらないからブルーレイ発売がもはや奇跡だし!そうなると1も2も揃えたくなるっていうのが人情ってもんです。
グリッケンハウス監督は「続編は観るにはみたけど、全然印象に残っていない」と、厳しい発言をしていましたけど。
でも、いいんです!
「エクスタミネーター」は、ポスターみたいな素敵な格好は劇中ではしないし、ギンティの上腕筋はあんなに太くないのに!って思ってしまうけど、「エクスタミネーター2」のポスターにあるギンティの戦闘スタイルには、多少の盛り付けがありつつもちゃんと劇中に同じような格好で出てきますしね。
下半身は、ただのデニムでしたが!

それはそれとして、面白いかどうか以前に出来映えが微妙な映画ですが、80年代の映画について語るならば外せない一本であることは間違いないでしょう!
これぞ、まさしく時代が生んだB級映画です!


テレビ放送、レンタルビデオ、セル・ブルーレイにて