【サイコダイバーはつらいよ】
アマプラにて。公開時に見て、画にはそこそこハマった。小洒落たハッタリ映画だよね。
久々に見直してナルホド!と感心したのはインドの混入。監督はパンジャーブ州で生まれ育ち、20代で渡米したインド人。だからか、美術に母国映画風味がブレンドされている。
一番強烈なのは、ある女性を本来、キリスト教風聖母に見せるだろう姿を、シク教グル風?に変換している。懐かしのピエール&ジルも連想するが、コレはインド人ならではの味かと!
もちろん、石岡瑛子さんによる美術も強烈ですが、その完成度はむしろ、映画をクールダウンさせている。その隙間から時に、監督の滾る溶岩が吹き出しているトコロがオモロい!
…んだけどねービジュアルは!でも、お話はトホホだよね。チョロいっていうか。
他人の心に潜る話は昔からあったし、アメリカ映画なら『ドリームスケープ』なんて思い出すが、ネタはよくても、そこからどう、さらに潜るか?が面白さの分かれ目でしょう。
本作は、シリアルキラーの心に入り込んだヒロインが恐ろしさで戦慄する…という始まりですが、ゼンゼン怖くない。そりゃそうで、作り手が美しく見えるよう仕立てているからね。矛盾している。本来、観客もおぞましくて、逃げたくならなきゃおかしいでしょう。
むき出しの天然の、狂った心の世界ってそうじゃないのか?
で、ヒロインが熟練と言えぬまでも、サイコダイブ経験者なのにチョロ過ぎる。なんなのあの、あっけない転向は?演出で "わるいドヤ顔”させてる場面なんて、笑っちゃった。
さらに、ヒロインが犯人をああ“裁く”のは、彼女の職業倫理から言っても、一番やっちゃいけないんじゃないの?なんであんな、一番安易な結末にしちゃったのか。時代の限界?
心の中で、ある印から犯行現場を導き出すことも、マトモな警察なら、容疑者の家宅捜索を丁寧に行えばわかることでは?
…等々、語りのチョロさをアチコチに感じる。当時の、MV出身監督の弱点だと思った。
J.Loさんは、役柄には合っていないと思うが、ヒロインとしての魅力はあり、見飽きない。
いちばん魅力的な役者さんは、白犬さんだったと思いますが。
思ったよりトホホが多々だったものの、次の『落下の王国』も機会あれば、インド視点から見直したくはなりました。
<2023.6.5記>