ひちょ

ザ・セルのひちょのレビュー・感想・評価

ザ・セル(2000年製作の映画)
4.0
精神病を持つ犯罪者の深層心理に、科学の力を持ってダイブして、事件を解決する、という、筒井康隆の「パプリカ」と、「羊たちの沈黙」を混ぜたようなサイエンスフィクション。
あまりヒットしていなそうなところを観ると、物語としてきちんと整合性の取れた映画ではないのだろうな。映像美を楽しむ映画という感じがする。しかしそのアートワークがいい意味で気持ち悪くて最高。

ジェニロペ演じる主人公は、精神病の人の心の中にダイブすることで問題を見つけて解決する、という方法を取っている医者?セラピスト?なのですが、「羊たちの沈黙」みたく、幾度と女性をさらって「どうにか」していた精神病を持つ男性が意識を失ってしまい、ジェニロペに頼らざるを得なくなり・・・。

ただただ、ひとりの人間の、とりとめのない深層心理を映像化しただけではなく、現実の犯罪を解決する物語なので、現実世界・現実の社会に根ざして(表現が悪いので検討、後に書き直す)いて、FBIが事件を解決に導くので、良かったです。そういう精神とか形のないものが現実と関連している話、面白いですよね。

人格というもののはどこに宿るのかという問題、わたしは詳しくないしきちんと考えたことはないのでよくわからないんですけど、脳の発する波動のようなものを繋げることで相手ないしは自分の心のなかにダイブする・させる、という技法を使っているのだけど、その深層心理に入っていく瞬間の映像、入ってからの映像がほんとうにほんとうに気持ち悪い。笑
きっとしたたか酔っ払っているときに観たら吐くと思う。

犯罪をしてしまった男性・カール以外にも、精神病を患う少年がひとり出てくるのだけど、ジェニロペ、彼らに同情して助けたい救ってあげたいと思ってしまい、危険な目にあいます。そういう気持ちってたいてい身を滅ぼすよね。悲しいね。

サイコパスは善悪の判断がつかないもの、と認識しているのですが、その点で言うとカールはサイコパスではないんですよね。善悪の判断はついている。女の人をさらって「どうにか」するたびに彼は苦しんでいて、だから心のなかでジェニロペに「僕を助けて」と縋るんですよね。つらくて苦しくて、けれど彼自身にはもはやどうすることもできない。
救いとは?救うとして、どうやって?

心のなかに入るということ、心のなかに入れるということ。「人の心のなかに入るなんて、ろくなことじゃない」というようなセリフがあったと思いますが、まさにその通りだな。ジェニロペにとってそんなことは何の問題にもならないんですが。

映像美に関しては恐らく多くの人が言及しているし、この映画における有名なところだと思うので、触れないでおきますね。

続編もあるらしいので観てみたいな。
ひちょ

ひちょ