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ザ・セルのRのレビュー・感想・評価

ザ・セル(2000年製作の映画)
4.0
あら! すさまじいビジュアルエフェクトでアートな雰囲気を楽しむだけのちょっと退屈なSFファンタジーとばかり思って見てなかったけど、ほおー! ストーリーもなかなか面白い! 冒頭、ジェニファーロペスが広大で美しい砂漠の丘陵に馬を走らせてる、目に染みるようなダイナミックなショットのあと、小さな子と何やらよく分からない話をしている。海に船を出すだの出さぬだの。はて?と思ってると、それはとある研究所にて、意識不明の少年の意識に入り込んで、何とか現実に意識を呼び戻そうとする実験だったのだ。けど、それがなかなかうまくいってない。その一方で、若い女をどデカイ水槽の中で溺死させ、漂白剤で人形のように白くした死体に精子bukkakeて殺害、という異常な連続殺人が起こってて、その犯人を捕まえようとする刑事ピーター。演じてるのはヴィンスヴォーン。ボクなぜかこの人の顔めちゃくちゃ好きですねん。イケメン?なのかな?よく分からん。まいいや。で、あらたにジュリアという女が誘拐されてしまうのだが、その犯人が特定され発見された! と思ったらそいつ意識不明の状態! 早くジュリアを見つけないと溺死してしまうかも!というわけで、犯人を意識の研究所に連れて行き、彼の意識の中に入ってジュリアの居場所を探ろうとする、ってかなりインセプションぽい内容。けど、こっちの方が意識内の世界観がアート系。タルコフスキーやフェリーニやダリなどのキチガイじみたゴージャスさを髣髴させるが、一番近いな、と思ったのはMadonnaのBed Time Storyという曲のPV。あれのポップさをもうちょいアートに傾けると本作の感じになるのでは? 実際そのPVからパクった?って思うような美術もあり。テーマも似てるので、Youtubeで見てみてください。映像のエグみは結構キツく、馬の八つ裂きはおおー👏くらいで済むが、お腹を引き裂いて内臓をキュルキュルのシーンはゲエエエてなるし、クライマックスの乳首もヒエエエエ! 意識内のシーンは完全にファンタジーで、人物の衣装とかちょっと笑ってしまうくらいシュールかつ大袈裟、故に美しい。現実と意識内の双方から事件解決の糸口を見つけ出そうとする彼らの奮闘を描くと同時に、犯人の子供時代が意識内に現れ、当然、どんな凶悪なシリアルキラーも、幼年時代という真っさらな時代があり、時代や社会の歪みを一身に吸収してしまったひとつの負の凝縮であることを提示する。その反面、ピーター刑事の意味深長なことばは、それでも闇に呑み込まれない人間の強さがあることも示唆している。終盤は本作のあらゆるドラマ的要素が一点に収斂していき、スピードとスリルを増して、おおおお!ってなった。ここまで極端にファンタジー要素を盛り込んで、前半ペースをどんよりスローにしなくても全然面白かったろうに、と思うが、まぁそれは監督の美意識の選択ですね。単なるド派手で表面的な映画と思ってたのは覆されました。アーティスティックな野心作でありながら、かなりふつうにおもしろいサスペンスでもありました。
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