Yukenz

イントゥ・ザ・ワイルドのYukenzのレビュー・感想・評価

イントゥ・ザ・ワイルド(2007年製作の映画)
4.0
社会のストレスフルなしがらみから解放されて、大自然の中で静かにひっそりと生きていきたいという思いは多くの人が抱いていると思う。でも大自然の中で生き抜いていく知識や術を身につけるのは至難で、現代社会の中で当たり前のように享受しているテクノロジーの力を知ってしまった身としては、それらと決別して大自然の生活に向き合って行動に移すことは先ず出来ないものだ。

本作は実話に基づいているということで、本当にそんな行動に移った1人の青年を描いている。
その背景には幼い頃からの両親の絶え間ないケンカや争い、家族への裏切りがあったようだ。彼が社会に馴染み長い人生を送るうえで必要な将来のパートナーや家族への想いが十分に育まれなかったのはショックだった。彼はある意味現代社会の犠牲者となってしまったが、その反動で人一倍自立心が培われ、何ものにも縛られない自由を求めるようになった。そして偉大な哲学者たちの教えも彼の背中を後押ししていた。

彼が残してくれた手記は大変貴重で、人生の示唆に富んでいる。
特にアラスカのバスの中で最後に綴った言葉は、大自然に魅了され俗社会を絶った彼の人生の総括のようだった。
「幸福が現実となるのは それを誰かと分かち合ったときだ」
人は結局、一人きりでは生きていけない、生きる意味を見出せないということだろう。確かに、人と分かち合えるってこと以上に幸せなことなんてないのかもしれない。
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