コミヤ

イントゥ・ザ・ワイルドのコミヤのネタバレレビュー・内容・結末

イントゥ・ザ・ワイルド(2007年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

マイベスト映画の3位に入れていた本作。
上位3位の映画に関してはその時に感じた衝撃や感動が再鑑賞時に薄れてしまうのではという危惧から中々手をつけられずにいたのだけど、ずっと放置する訳にもいかないし、前に鑑賞した時と今では感じ方に違いはあるのか知りたいので久しぶりに鑑賞。

物質的な価値観に支配される両親や社会に嫌気がさし、大学卒業と共に家族、金、名前全てを捨てて大自然を歩きまわったクリス・マッカンドレスの伝記映画。

自分にとっていい映画の条件の一つとしてその映画のワンシーンをふと思い返しただけで涙が出てきそうになるというものがあり、本作のラスト周辺はまさにそれ。
資本主義社会に絶望し、自然の中に一人で身を置くことを決めた彼が旅の中で真の孤独を実感した時に見つけたある真理。
「幸福は人と共有してはじめて現実になる」
最終章のタイトルの通り「英知を得た」のだ。言ってしまえば本の受け売りに過ぎない考えに囚われていた頭でっかちな彼が始めて自分の体験から自分の言葉で編み出したからこその重みがある。
道中に出会うヒッピー夫婦、大柄な農夫(Mr.ハッピー)、エキセントリックなデンマーク人カップル、ギター弾き少女、妻子供を無くした老人、そして家に残した家族の回想を交えながら描かれる一連シーンにはいつ見ても心揺さぶられる。この真理に至る上で妻子を失ったクリスチャンの老人が無神論者の主人公に言う「許せる時が来たら愛せる。愛せる時が来たら神の光が照らす」 という台詞が非常に重要な意味を持ち、印象深い。

他の条件として映画に描かれていない部分まで想像したくなるような登場人物の存在もあると思う。上に書いた様々な登場人物一人一人の人生を辿りたくなるほどの奥行きが本作にはある。

それではこの映画では人間は一人では生きられない生き物なのだということだけ言いたかったのかというとそうではないと思う。結果的に彼は死んでしまったがこの旅に出なければ、真理に辿り着くことができなかった。本の受け売りと言ってしまったが「人間は一度自分を試すために太古の人々と同じ環境に身を置くべき」や「生き方が理性で支配されたら人生の可能性は打ち砕かれる」、「物事を正しい名前で呼ぶ」などの本での学びを実行に移したからこそ真の学びを得ることができたのだ。本作をバッドエンドという人もいるがその意味で自分はハッピーエンドだったと思うようにしている。

こういうプロセス?とその重要性?をしっかり描いているからこそラストメッセージに説教臭さを感じずに純粋に感動できるのだと思う。

また自然や旅を厳しくも同時にこの上なく魅力的に描いてることもそのことに起因していると思う。穏やかな音楽に乗せて描かれるパシフィッククレイストレイル、コロラド川、そしてアラスカの絶景。原作者ジョン・クラカワー監修の脚本、ハリウッドの編集技師の巨匠ジェイ・キャシディによる編集の成す力も大きい。巧い時間軸の操作、作品に公平な視点をもたらす妹のナレーション、スプリットスクリーンなどの映像演出などでラストに至るまで楽しませてくれる。

今まで程の感動はなかったもののやっぱりマイベストには入れたい作品。

若き日のクリステンスチュワート、ジェナマローンが可愛い。てか似過ぎでは?笑
コミヤ

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