ちろる

ウォーリーのちろるのレビュー・感想・評価

ウォーリー(2008年製作の映画)
4.1
荒れ果てた地救に突然降り立った宇宙船、そのから現れたロボット。君は一体何しにきたの?

イヴと名乗ってくれたその子は何もかもパワフルで、少し振り回され気味、でもボクは一目で君に恋をした。

地球にとりのこされたゴミ処理ロボットのウォーリーは、孤独に暮らしていたが、ある時地球に宇宙船がやってきて、初めて出逢った地球外ロボットに夢中になる。

驚くのが、主人公が会話を始めるまで20分近くかかり、ディズニーアニメではあり得ないくらい静かな始まり。
しかも人間も30分くらい経たないと出てこないので、無機質な2人のロボットの電子音が地球でここだけで響いているのが感慨深い。

描かれるのは人間が見捨てたゴミだらけの地球と、技術の進歩によりすべてのことをロボットが行う宇宙都市。

掃除、洗濯、移動、買い物、起き上がることまで、すべてロボットがやってくれるんです。夢のような世界ですが、それに甘えた人間たちはぷくぷく太り、読み書きさえできず、受動的な生物になってていく。
ロボットとは反比例するようにおバカになっているのが明らかなこの様子を観て、ゾッとする人も多いはず。ウォーリーが公開された2008年はブラックジョークで捉えられていたわたしたちも2022年今現在はさらに笑い事ではない。
因みにそんな人間たちは何やらカプセルのようなものに入っているためほとんど人間同士「触れる」行為をしていなかった様子、それが地球からやってきたロボットウォーリーに、『手を繋ぐ』ことの素晴らしさを教えてもらうのです。

そんなウォーリーが、イヴに恋するラブストーリーを軸に展開するこちらのお話、素晴らしいのはラブストーリーだけにとどまらずに、人間たちが本来の『生きるちから』を呼び戻し、再び地球での文化的な生活を求める人間たちの原点回帰をきっちりと、ユーモアも交えて描いているところ。
むしろ、ウォーリーのラブストーリーに見せかけて、こっちが一番書きたかったのではないでしょうか。

エンディングはとても美しくて必見、ゴッホやモネのタッチで魅せる地球の自然の美しさが映し出され、ゴミだらけだった地球にまた文化的な生活が戻ってきたことを案に示していて感動的。
セリフ少なめで行間で見せていく部分もおおい本作、どちらかと言うと大人向けのSFアニメーションのような気がします。
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