愛の伝染。フェミニズムの暗喩表現。
セルズニック脚本のせいか、言ってみればヒッチコックらしくないテーマと筋運び。アメリカに招聘してくれた恩人のプロデューサーだから、いろいろ遠慮もあったかもしれない。
サスペンスや謎解きのスリルもあるにはあるが、それよりも容疑者と証人の関係が弁護士、判事それぞれの夫婦関係に影を落としていく描写を軸にしている。
ヒッチコック風味を期待すると、消化不良にもなるが、人間劇としてはとても良いのでは。
撮影が雲泥の差でクオリティが上がっている。照明も巧い。今作からヒッチコックの映像は始まったといっていいのではなかろうか。
「情婦」の弁護士チャールズ・ロートンが出ていることはノーチェックだった。今作でもメガネを駆使した演技が良い。法廷が似合っている。