垂直落下式サミング

ゴジラ×メガギラス G消滅作戦の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

3.5
2000年の作品だが、着実にキャリアを歩んできたにもかかわらず、心のなかで過去の失敗を引きずっている女性自衛官という田中美里の役柄は、当時としても非常に現代的なヒロイン像であったと思う。
対して谷原章介の方は、ロボット技術者としての腕を持て余してグータラしてる奴で、手品を披露して小学生から見物料としてお小遣いを巻き上げているようなダメ野郎だ。
才能ある女性の社会進出や、ろくに仕事もしていないオタクな生き方が、一般に認知され許容されはじめた時期を反映したキャラクターであり、最後までみると「エネルギー利権の問題」の風刺が、作品の主とするところだとわかるので、社会劇としてはなかなか面白いテーマを設定していたように思う。
しかしながら、最初の場面で大阪城と並んで国会議事堂が立っており、これはこの世界ではちゃんとした理由付けがあるのだが、どうにも間抜けにみえるし、ゴジラの形も前と同じで、イケメン過ぎてあまり怖くないし、毎度のことながら敵怪獣がタイマンを張るには弱過ぎる。
初代以外のゴジラは無かったことにしているシリーズ通してのスタンスはいいとして、今回は人類がゴジラを消滅させようという話なのに、肝心のゴジラの描きかたは、人の味方か、自然の猛威か、今まで通りどっち着かずの立場で、やはりそこがヌルく感じる。
今回の新怪獣はメガヌロンの親玉メガギラスというやつだが、もともとこいつはラドンの餌だということだし、昆虫型なのでモスラのようにプロレスができないし、段階的に変態していくのはヘドラのころからやっているし、小粒と親玉がいるというのはデストロイアとまったく同じで、目新しさはほぼない。
それにしても、序盤でメガヌロンの卵を発見する子供のエピソードが丸々ムダなのは、なんとからならかったのか。物語の中心人物のひとりかのような登場をするのに、途中からこの子がストーリーから消える。そりゃあ一般人が関与できるような事態ではないのだけど、じゃあハナからクローズアップしなくていいよ。
見所は、夜の渋谷の町中でカップルが巨大な昆虫の幼体に惨殺される場面。かなり暴力的な表現をしていて、お子さま的にはショック度合いが強め。
あと、トンボつながりで人気絶頂期の極楽とんぼが出ているのにも注目。太っているやつとガラの悪いやつのコンビは、劇映画のガジェットとして映える。
ラストでは、ヒロインの女性が常に結わいていた髪をおろすことで、「この女の人はなにかふっ切れたんだな」と子供にもわかるくらい大袈裟にみせてくれるので、とりあえずはちゃんとした映画を一本見終えた感じがした。