はぐれ

恋の秋のはぐれのレビュー・感想・評価

恋の秋(1998年製作の映画)
3.6
ロメールの四季の物語シリーズの完結編。偶然を装い運命を操作しようとした女たちの物語。

そのおもちゃの対象にされてしまった葡萄酒作りの女性マガリがめちゃめちゃ不憫。親友のイザベルからは新聞の広告で見つけてきた男性を秘密裏にあてがわれ、息子の恋人からはその恋人の恋人であった高校教師をこれまた秘密裏に引き合わせられる。自分が主人公だったらもっと早いとこキレまくってるわ(笑)

フランスののどかな田園地帯には似つかわしくない原子力発電所の巨大な煙突。傲慢な考えで決して侵してはいけない神の領域にまで手を出してしまったイザベルを揶揄しているかのよう。偶然なんて人間が意図的に作り上げるものではない。それは神の領分であり自然に任せなくてはいけないもの。マガリが必要以上に原発の煙突を嫌った理由もその潜在的なナチュラリストの一面があったからなのでは?

駅に送ってもらう道中でイザベルからサイレント仲人されたナイスミドルに対してキレるマガリの心情は痛いほどわかる。謀られた偶然に対して膨れ上がってしまった想像と疑念。お互いを想っているのにすれ違ってしまう人間関係のもどかしさ。そしてそれを観客と一緒に神の視点で観察する監督。本当にロメールってひねくれた性格をしているよね😂映画は監督の一神教。影武者の時の勝新じゃないけど演者に神様はいらないのよ。

ラストの大団円のダンスもあの表情で終わらせてしまうロメール。四季の物語シリーズのラストを飾るにふさわしい実に引っかかりのある印象深いカット🥺
はぐれ

はぐれ