いろどり

儀式のいろどりのレビュー・感想・評価

儀式(1971年製作の映画)
3.7
家父長制に苦しめられる若者の視点で、一族の冠婚葬祭の儀式を通して日本の闇を暴く。たくさんの人が出てくるので相関図が必要な映画だった。

家父長制は家族というより親族の中での絶対的権力者。たとえ息子の奥さんだろうと手籠めにして咎められない。いとこ同士の「君のお父さんて誰?満州にいた頃、僕の父が君のところに行ってない?」で出自を探る会話が恐ろしい。

一族の独裁者を演じる佐藤慶が鋭い眼光で、出てきた瞬間に周囲が凍てつくような空気になる強烈な存在感。まさに鬼。

主人公が当時を振り返るというスタイルで、やたら説明セリフが多いのはブレッソンのようで、悪しき慣習に閉じ込められた居心地の悪さは「ザ・スクエア 思いやりの聖域」を彷彿とさせる。全編を通してじめっとした雰囲気が立ち込め、武満徹の音楽が不安をあおる。

すべては儀式でありそこに意味などない。形骸化したルールに疑問を持たず、問題から目を背ける様子は昔の因習とは言い難く、今も脈々と受け継がれていると思わざるを得ない。

大島渚監督の戦後の総括だという今作。ゆっくりじわじわと、綿で首を絞めるようにリアルを叩きつけてくる映画だった。
いろどり

いろどり