Ardor

儀式のArdorのレビュー・感想・評価

儀式(1971年製作の映画)
-
Amazon Prime Videoにて鑑賞
---
 これ、家父長制についての映画という触れ込みだったが、平たく言えば家長が金持ちで、かつキチガイの家って現代でもこうだよな、っていう映画だった。満州男が精神がおかしくなった時祖母が「(精神病患者などと)外に知れ渡っちゃ駄目よ。(医者を呼ぶのは)よしなさい」というシーン、てめえらが異常なくせに身内の異常さは外に漏らしたがらない名家あるある。自分自身にも思い当たる節があるこの調子に徐々にチョークされていく感覚。武満徹の不協和音的な音楽もあいまって憂鬱に拍車がかかり見てるのがきつくなった。絶望にしか進んでいかない感覚。。
---
 入り組んだ家庭の関係図がよくわからず困惑したが、その入り組んだ家計そのものがすべて内務官僚だった祖父一臣が妾を作りまくっていたからだった。まとめると以下。
 満州から帰ってきた満州男は父が自殺しており、母とともに桜田家に引き取られる。そこには祖父の妾の子①輝道②共産党員の勇③中国で政治犯罪のため投獄されていた進とその息子で後に警察官になる正、おそらく嫁入りしてきた節子と娘の律子。その他にもいるが割愛。メインは満州男と祖父と輝道と節子と律子と正だ。
 タイトル通り節目節目の儀式を通して出会う親戚と、その関係性に息をつまらせる満州男、そして節子、律子、正、輝道。最初は輝道からの何某かの電報から始まる。そして回想に入り、父の一周忌、満州男が甲子園出場のときに亡くなった母の葬式(一臣と輝道が節子に手を出す)、勇の共産党員同士の結婚披露宴(節子が亡くなる。自殺として処理されたが、満州男は一臣のせいだと思っている)一臣の政略結婚に利用されて、挙げ句、花嫁に逃げられた満州男の結婚披露宴(正が交通事故で亡くなる)、同日の正の葬式(満州男は精神的にこわれ始める。)、そして輝道の死と添い遂げる律子。満州男は浜辺でへたり込んでかつて子供の頃、輝道と律子と節子と満州男でやっていた野球を思い出す。
---
 印象的なシーンは正が満州男の政略結婚の結婚披露宴のときにかなり心が乱れていたところ。政治犯で中国で投獄されていた父からの反発で体制側の警察官になったはいいが、披露宴に列席する金持ち連中と一臣の作り上げたでたらめな親戚関係に苛立っており、満州男に「いつまでこんな茶番劇をやってるんだ。日本を毒している政財界の奴らと!」と怒鳴り、新日本国家改造計画案を読み上げようとする。満州男がなんとか生きていられるのも正のように、父と出会ってからひたすらイライラして行動を起こして生きてきたわけではないからかもしれない。輝道と律子とのような三角関係もないのだし、正と仲良くなれよ、満州男!可愛い弟じゃないか。と思ったりした。
 もう一つ印象的なシーンは、正の葬式の時、満州男が酔っ払って(なのか死ぬのは自分だとの意味を込めてか)正を棺桶から出して自分が中にはいっていた時、一臣に叱責されて抱きついて初夜の真似事をするシーン。輝道も一臣の肩を蹴り抑えて「貴方は責任者なんだから初夜の責任も持ちなさいよ」と助けるシーン。そしてその後縁側で一臣がうなだれて肩をすぼめるシーン。恋敵でもあるが、一方で連帯が見られたのが意外だった。
Ardor

Ardor