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ある結婚の風景のOASISのネタバレレビュー・内容・結末

ある結婚の風景(1974年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

一組の夫婦の結婚生活や別れ、再会等を描いた映画。
監督は「野いちご」等のイングマール・ベルイマン。

各50分の6話からなるTVシリーズとして企画されたものを映画として制作した作品。
ドラマとして見ると比較的短い方ではあるが、一本の映画としては5時間という超長尺。
付き合いが長くなる分夫婦への思い入れも深くなってくるが、二人の対話から見える男女関係の煩わしさ、感情の起伏の激しさにかなりの疲労感を覚えた。

結婚10年目の心理学者ユーハンと弁護士のマリアンは、新聞社からの取材を受けて夫婦関係について語る。
二人の娘に囲まれて、金銭的にも苦労は無く生活に何の不満もない。
そんな、幸せで満たされているように見える家庭でも、そこに愛があると無いとではまた違って来る。
夫婦とは?そして愛とは?
形の見えない愛という存在を証明する為に、言葉を尽くして語り合う二人。
相手への思いやりや慈しみ、寛容さやユーモアは夫婦間には必要不可欠ではあるが、それが愛かと問われればまた別物でもある。
不確かだが頼らざるを得ない愛というものに徐々に不安を覚えて行った。

友人との食事会で、友人夫婦らが口論に発展したのをきっかけにユーハンとマリアンの中にも疑念が浮かび始める。
これから私達は永遠に一緒なのか?
友人夫婦のように、醜い言い争いをしなければならないのか?
確かに、共に同じ道を生きて行く存在としてぶつかり合う事は避けられないものであるし、何をするにしても二人で話し合って決め無くてはいけないというプロセスを踏む事になる訳で、これから先何十回、何百回もそんなやりとりをせねばならんのかと考えると全て放っぽり出して逃げ出したくなる気持ちも分からなくもない。

マリアンから3人目の子が出来たと報告されたユーハン。
選択を間違えたら取り返しがつかないと一旦は産むことを決心するが、過去の経験から中絶手術を受けると決断する。
家族計画をしっかり立てていた筈なのに、気の緩みで思いも寄らぬ事態になってしまうのも良くある話ではある。
一人目、二人目ならまだしも三人目ともなると「また子育ての日々がやって来るのか...」となるのも理解出来る。
ましてや歳も歳なだけに、前のようにスムーズには行かないという不安もあり、家族計画の大切さを思い知らされるのだった。

別れたり、くっ付いたり、再会して仲直り、しかし揉めてまた別れ、やはり元に戻るという複雑な関係を経た二人。
そんな彼らの行動原理を見ていると、どうやら根底にあるのは性生活の充実度なのだろうと思う。
関係が悪化する事を恐れて見ないフリをした結果更に状況が悪くなってしまう場合もあるので、求められれば応じる、そして今度は自らも求めるといった思いやりが必要なのだと感じる。
ベッドでの淡白さに嫌気が差したかと思えば、久しぶりに熱心な奉仕に身も心も満たされるといった、セックスによって多くの問題が引き起こされ、それと同時に解決出来てしまうような万能さがある。

セックスの問題をさて置いて疎かにしない事が夫婦間にとって重要だと、肝に銘じておこうと思う作品だった。
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