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ある結婚の風景のpikaのレビュー・感想・評価

ある結婚の風景(1974年製作の映画)
4.5
レンタルしたら画質が悪かったのでBlu-rayを購入したものの劇的に綺麗になった感じもなく手元に置いておきたい人以外はDVDでも十分かと。
ベルイマンによる50分×6話のテレビドラマ。映画作りは難解な方向に行きすぎて興行的に全く振るわなくなってしまったためテレビドラマに着手し、今作を作ったら放送時間帯に街から人が消えたと言うほど当時の歴代最高視聴率を記録したとかなんとかホントか噂か。

ドラマだけあって確かに長いが6話に分けてあっても次よ次よと見たくなる上、人間の感情の変化や揺れ、たった二人の人間の織りなす平坦な人生の中の僅かにある劇的な日々と言うならば必要な長さであり無駄がなくこれ以上ないほどの濃厚さ。

名言名台詞だらけでメモしておきたくなるくらい人生や愛や対人関係などの哲学が飛び交う。
結婚して10年目に夫婦で雑誌のインタビューを受けるシーンから始まり、何不自由なく充実し満ち足りた日々を送る夫婦のその後のありふれた10年を描く。
ベルイマンの作品テーマの一つである「愛と孤独」も含みつつ、人間のエゴと愛の相互関係や自分自身の本質、欲望や願望、「幸福とは」など日常を生きる私たちの中に潜む自分でも認識していない、鬱屈し抑圧した何かを会話劇で炙り出す。

3〜5話は外にも出ず閉じた空間の中で二人きり、他者の存在は薄くほぼ夫婦2人の会話のみ。
近年で言えばビフォアシリーズのようなミニマムさであり簡素な舞台劇でも上映できるくらいに目に見える装飾がない削ぎ落とされた空間なので、誰かの家を使えば素人でも作れるくらいの低予算っぷり。
映画の要素である脚本演出カメラ編集演技という人間の能力を発揮する余分な過剰は一切ゼロな構成は「技能は金にも勝る」と言わんばかり。
300分飽きさせることなく画面に引き込み見せ切って、教訓も戒めも余韻もたくさん残してしまう技量は圧巻。

既婚者でも独身者でも「自分と他人」という抱えている根本は同じであり、人を選ばず万人の心に多少なり共感し響くものがあると思う。
さすがに青春真っ盛り!前途洋々!未来は希望で溢れてる若者にはシックリ来ないかもしれないが、人生をガーーッと駆け抜けて少し立ち止まり振り返る瞬間が出て来た大人は何歳の人でも、見たくないものか見たかったものかは別として、見ておいて損はない作品だと思う。
でもこれ見て離婚率が増えたというのはどうなのだろうか。むしろ逆だと思ったけど夫婦というものは奥深い。いや根深い。。

こんなにも人間というものの側面や男女の本質をドラマに映し出してしまうベルイマンにまたさらに惚れました。天井知らずに好きです。