もなみ

ある結婚の風景のもなみのレビュー・感想・評価

ある結婚の風景(1974年製作の映画)
4.0
短いバージョンのだったけど、内容が濃くて 観終わるのに2日かかった。

最初の2つのシーン以外は ほぼ夫婦だけの会話劇で、人生に関する至言の連続。
胸に刺さった。

片方が良いこと言ってるのに 相手が寝ていたり アクビしてたり、お互いに すれ違っているシーンは、夫婦あるあるだろう。

理屈っぽい話題が相手には受け入れられずに感情論にすりかわったり、一般論を言ってみたとしても、説教じみていると反発されたり。

夫婦の会話は大切だと言うけど、ほんと、難しすぎる。

言いたいことは山ほどあるけど 大事な人と、ただ一緒にいる時間を大切にせねば、と強く思った。

リヴ・ウルマンの演技最高。

蛇足だが、70年代のスウェーデンが舞台だけど、食事や住宅や景色も、じっと見入ってしまった。

主人公達が老い、乗ってる車が 車種もファミリー向けのワゴンでなくなり、しかも ぼろぼろになっているのもリアリティーがあった。

当時 世界的にウーマンリブの運動があったり、スウェーデンをとってみれば 高福祉政策やそれに付随した税金の高さ、女性が職業を持って自立していることなど、社会制度がいろいろ取りあげられ、離婚率の高いことすらも 先進国の証のように持ち上げられていたけれど、やっぱり離婚すると経済的にきつくなるのも、はっきり描かれていた。

夫が、老いや人生に関してペシミスティックで不器用で、最初の ほころびのきっかけの浮気も、夫の側に、家族を背負う義務や社会生活に対する逃げがあったように見えたけど、あるがままの感情を大事にしている感じはあった。

妻は職業柄 淡々と業務を遂行するのが得意で やや勘の鈍いところがあり、それが生きる姿勢としては、強みになっていたように思う。
子供の頃から自分を殺して人の顔色をうかがいながら優等生を演じてきたけれど、せっかくの元夫婦の再会の時に あけすけな会話をして 元夫にゲンナリされたり、良い奥さんだったけれど、何かちぐはぐ。自分でも気付かない不安があって、夜 うなされてしまったりもする。

こんな作り込まれた人物造形も とても興味深かった。
もなみ

もなみ