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ある結婚の風景のエディのレビュー・感想・評価

ある結婚の風景(1974年製作の映画)
4.2
ベルイマンによる夫婦関係の終焉を描いた長編作。オリジナルのテレビ番は5時間超でめちゃくちゃ長いので3時間弱の劇場版が作られたが、今DVDで観れるのは90分のテレビ番組を並べたオリジナル版のみのようだ。
このドラマをきっかけにスウェーデンで離婚が急増し社会問題になったという問題作だが、ケンカシーンばかりでなくベルイマンらしい機微に富んでいるし、無駄がない構成なので長時間でも飽きなかった。
冒頭、雑誌が「素敵な夫婦特集」で取材に来るくらいに仲が良かったマリアンとユーハンは友人たちからも羨ましがられている結婚10年を迎え仲が良い夫婦で、実際、第2話まではケンカもしない仲が良い夫婦シーンが続く。しかし、記者が覗いた別室にはごみが散乱していたり、仲が良い割には夫婦微妙に会話がかみ合っていなかったり、意見がぶつかりそうになるとどっちかがにこやかに遠慮しているなどの伏線が感じられる。この辺は実際の夫婦にいかにもアリガチだ。
こんな素敵な夫婦は第3話のカミングアウトで突然急変する。伏線もなかったので唖然としてしまうが、その後も大人の対応で認め合って別居や離婚の相談を進めて行くので、自分にはできない対応だなと感心していたら。。。

昔、3時間弱の劇場版を観たときはもっと激しい応酬があった記憶があるが、テレビドラマ版は仲が良いところも十二分に時間を割いているので、二人の心境の変化が良く分かる。
それにしても、男女の感覚の違いによる会話の噛み合わなさなどを良くも表現しているなと恐れ入った。結婚している人なら身につまされるようなシーンばかりだろう。
ちょっとしたこと、ちょっと噛み合わない会話の積み重ねがとてつもなく大きくなっていって、ある時点で爆発して離婚に至る。そのサマを本当にうまく描いている。
ケンカ別れではなく、二人とも真の意味で大人になって再会しているので決して後味が悪い映画ではないし、この映画が離婚に踏み切る動機になるとは思わない。むしろ、マリアンの老いた母が言うように、誰にとってもそんなモノなのかもしれないから。
自分は「結婚には愛はない」のではなく、「愛は歳や立場で形が変わる」と思っているので、必ずしもベルイマンの主張には賛同できないけど、考えさせられるものが多いと思う。
あまりにも長いので何日かに分けて観るつもりだったが、一気に観きってしまうだけの完成度だった。
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