ペイン

ある結婚の風景のペインのレビュー・感想・評価

ある結婚の風景(1974年製作の映画)
4.7
人生の5時間を捧げるに値する大傑作。

『ビフォア・ミッドナイト』『ブルーバレンタイン』『マリッジ・ストーリー』『アイズ・ワイド・シャット』…他これら倦怠期夫婦映画の源流にしてキング。

クローズアップと長回しの多用、じっくりねっとり舐め回すようなS・ニクヴィストによる生々しいカメラワーク。本当にそこに実在している夫婦としか思えない主演2人の圧倒的演技力。

本当にこの2人の夫婦の10年ぶんの人生を体験したかのような感覚。観ている最中に何度も“これは映画だ!役者がいて監督がいてカメラマンがいて音声さんがいて…”と自分に言い聞かせながら観ていた。そうでないとあまりの生々しさに身と心が持たなくなってしまうから。

黒澤にしろ、ベルイマンにしろ普遍的な1つのフィクションに過ぎないのに人生の深淵に触れてしまったような感覚にさせられるから本当に凄い。

この内容と5時間という尺でもずっと見ていられるのはまぎれもなく主演二人の魅力に他ならないし、感情を爆発させ、怒号が飛び交ったシーンの後にこの二人がイチャイチャじだす瞬間はたまらなく可愛い。

あと個人的に前半部の二人の寝室のショットがたまらなく好き。本当にさりげない衣装や美術、小道具の使い方に唸る。

頻繁に見返せるような作品ではないが大切な1本になりました。また年老いて観たら違った味わいになるのだろう…
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