赤

素晴らしき哉、人生!の赤のレビュー・感想・評価

素晴らしき哉、人生!(1946年製作の映画)
5.0
2018年DVD鑑賞21本目

フランク・キャプラの集大成的作品。
アメリカ映画協会の選ぶ「感動の映画ベスト100」では1位、アメリカでは年末に必ずTV放映がされているとのこと。まさに不朽の名作。

これまで映画は単なる娯楽としてのみならず、何か必ず得るものがあると思って鑑賞をしてきた。観ている時は嫌な事を全て忘れられたり、観終わった後に様々な思いを抱いたり考えさせられたり。小さい頃から最高の人生の教材だと思ってきたし、今もこれからもそれは変わらない。

数多ある映画の中でも、鑑賞後に一生心に残り続ける作品と出会えた時の感動は筆舌に尽くしがたい。製作に携わる全ての人の情熱と魂が込められていて、観た者の人生を変えてしまうぐらいの凄まじいパワーを持っている作品。
この「素晴らしき哉、人生!」はまさに自分にとって人生レベルで大切な作品になってしまった。

主人公のジョージ。弟のハリーを助けたために片耳の聴力を失う。バイト先のガウワーさんを一歩間違えば殺人に至るところを助ける。大学へ行き建築家になる夢も家業のために諦める。ハネムーンの費用も町の人々に迷い無く貸し出す。その後も貧しい人々の為に事業を推進し続けていく。
物語の核心へ向かう前に、まず自己犠牲を厭わないジョージの姿に感服させられる。

妻のメアリー。取り付け騒ぎ時に、躊躇いもなく自分達のハネムーンの費用を町の人々への貸し出しに使おうと提案するシーンでまずグッときてしまった。その後の宅地開発でマーティ二さんへ家を提供する際にパンと塩とワインを差し出すシーンでさらにグッときた。

ラストシーンで、これまで助けてきた人々の恩恵を受ける。人々が笑顔で、これまでの感謝を述べながらお金を寄付していく。ジョークを交えながら渡していく人や令状を破り捨てる監査官など、これがまた涙腺を刺激する。

ジョークに笑いながらもやはり信じ難い光景が目の前で繰り広げられていて思わず涙が出そうになる、という難しい感情を表現しているドナ・リードの演技が本当に見事である。
これまでの全てが肯定され、本当の幸せに改めて気付いたジョージを演じるジェームズ・スチュアートのあの満面の笑顔も脳裏に焼き付く。もうこの時点で号泣である。

"To my big brother George, the richest man in this town"
私利私欲ではなく、人々のためを思い続けてきたジョージへの弟ハリーからの言葉。
この言葉の持つ深さ、本当の意味での人生の豊かさをジョージは体現しているように感じた。

そして最後に天使のクレランスが残した言葉、"友ある者は、敗残者ではない"。
どうしてこの時代の作品はこんなにも幕の閉じ方が美しいのだろうか。

何の為に生まれてきたのか、生きている意味はあるのか、生まれてこなければよかったと思ってしまいたくなる時もあるだろう。
"一人の命は大勢の人生に影響しているんだ、一人いないだけで世界は一変する"
一人の命がこの世界にもたらす意味は想像以上に大きい。決して無駄な命などないという絶対的に大切なメッセージが直に心に伝わる。

まさに表題通り「素晴らしき哉、人生!: IT'S A WONDERFUL LIFE」、命あることの素晴らしさを表面的ではなくズシンと心の内側に伝えてくれる作品である。今生きていることに本当に感謝したい。

久々に鑑賞後も涙が止まらなかった、思い出すとまた感動してしまう。鑑賞後すぐに二回目も見てしまった。おそらく何度見てもラストシーンは泣いてしまうだろう。

観た者の人生観を大きく、前向きに変える力がこの映画にはある。映画としては完璧なのではないだろうか。
こういう映画に出会える感動があるからこそ、映画を観続けているのかもしれない。

もっと早く観たかった、一生観続けるであろう作品と出会ってしまいました。
赤