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按摩と女の堊のレビュー・感想・評価

按摩と女(1938年製作の映画)
4.4
初清水宏。
温泉宿の一部屋一部屋を横移動で覗いていくのは完全にウェスアンダーソン。
「変に気を回しちゃいやよ
こんな山の中にいると
とても東京が懐かしいの
ただそれだけなのよ
もうすぐお別れするんだわ」
→石を投げ合う二人のロングショット凄すぎる。
温泉宿は結局誰一人にとって故郷たる場所になることはなく一生湯船に浸かり続けたり、散歩し続けることができないように去るしかない。ラストの水面のきらめきがどうしようもなく綺麗。
ぜんぜん知らないんですが清水宏監督が「作為的な物語、セリフ、演技、演出を極力排除する作風」と言われているのは違和感を感じる。むしろ終盤の心情吐露はすこし胃もたれしそうになる。でもそこに盲というマイナス①の仮定法を用いることで「ものを語ることと語らないことのはざまで、どれだけ語らないことのほうが語ること以上に想像力を喚起するか」に忠実であろうとする姿勢が凄いんじゃない…?結局俺たち何も語ってないし何も見えてないよね?じゃあこの見えてるものはなんなの的な。石を投げるっていう触覚的な動作でそこに近づいている気がする。
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