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野良犬のkojikojiのレビュー・感想・評価

野良犬(1949年製作の映画)
3.5
1949年 監督、脚本:黒澤明 脚本:菊島隆三
2022.09.13視聴-416 評価3.5
●三船敏郎(村上刑事)
●志村喬(佐藤刑事)
●淡島恵子(ハルミ)

 第9作 志村×三船×黒澤2作目
 黒澤明、初のサスペンス。ベテラン刑事と新米刑事の組み合わせが一つパターンになるそのきっかけになった作品。
 ベテラン刑事志村喬がいい味を出している。
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 村上刑事はバス中でコルト式自動拳銃を掏られ、犯人を追うが見失ってしまう。    
 女スリのお銀に、場末の盛り場で食い詰めた風体でうろついているとピストル屋が袖を引くというヒントをつかむ。
 村上は、ピストルを探すため復員兵姿で闇市を歩きピストル闇取引を突き止める。
 しかし、犯人は強盗傷害事件をおかす。
 村上が組んだは淀橋署のベテラン刑事佐藤もその銃弾に倒れる。村上は必死になって犯人を追う。

 ベテラン刑事佐藤の力を借りて、犯人に辿り着くまでのストーリー展開が面白い。犯人を追う二人、戦後ままない東京の街の姿、退廃した文化を歩き回りながら見せてくれる。当時のプロ野球観戦も犯人を追う重要な場所になる。

 今になってはドキュメンタリー以上にその当時の東京を、社会を写した記録として貴重なフィルムになっているに違いない。

 犯人遊佐は木村功が演じている。ラストで村上から逃げる遊佐のドアップのシーンがある。この顔がすごい。非常に迫力があり、遊佐の追い詰められた精神状態が一瞬でわかる。素晴らしいカットと思う。

 遊佐も村上と同じ復員兵で電車の中でバックごと全財産を盗まれ、自暴自棄になってこの犯罪を犯していることがわかる。
 村上はその遊佐に同情するが、佐藤は境遇が同じ戦後のお前たちは似ているようで違うと言うシーンがある。

 戦後復員兵は、どちらにも転ぶ可能性があった。しかし結果的に前向きに生きる人間と、生活の中に溺れてしまう「野良犬」とは全く違うのだと佐藤は言っているようだ。

 ※(メモ)
 東宝争議の影響を受け、この作品は黒澤も参加した山本嘉次郎が中心の独立プロ映画芸術協会と新東宝提携作品となっている。
 東宝から去ったかつてのメンバーと作った作品で仕事は極めて順調で楽しく進められ、それが作品に反映していると黒澤は後日語っている。
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